年金制度改正法(繰上げ・繰下げ)
今年は年金制度にまつわる改正が多くなっています。本日は、年金の受給に関するルール(繰上げ・繰下げ)についてポイントをまとめます。
年金請求書
老齢厚生年金や老齢基礎年金を受けられる方には、実施機関(民間会社員は日本年金機構)から支給開始年齢に到達する3カ月前に、年金加入記録等が印字された「年金請求書」が事前に送付されます。
繰上げについて
老齢基礎年金(国民年金)の支給開始年齢は、原則として65歳ですが、受給資格期間(10年)を満たしている方は、本人の希望により、60歳から65歳未満の間に繰り上げて請求することができます。この場合、繰上げた月数に応じて減額されます。(最大5年繰り上げで30%減)※令和4年4月1日以降に60歳になる昭和37年4月2日以降生まれの方は減額率が緩和されます。(最大5年で24%減)
繰上げ請求の留意点
① 一生涯、減額された年金額を受給することになる。(65歳に達しても本来の年金額に引き上げられることはありません。また付加年金も減額されます。)
② 繰上げ請求をした場合には、取り消しや変更はできない。
③ 他の年金の給付制限等が生じる。(障害基礎年金は支給されない。寡婦年金がもらえない等)
④ 国民年金の任意加入被保険者にはなれない。
⑤ 振替加算は繰上げされず、65歳から支給される。
⑥ 老齢厚生年金の繰上げを請求する方は、老齢基礎年金も同時に繰上げ請求が必要。
繰下げについて
支給開始年齢となる65歳以降、1年以上受給を我慢した方には、66歳以降の希望するときに増額された年金を受け取ることができます。(増額された年金は申し出があった日の属する月の翌月から支給されます。)この場合、繰下げた月数に応じて増額されます。(最大5年繰下げで42%増)※令和4年4月1日以降に70歳になる昭和27年4月2日以降生まれの方は、繰下げ受給の上限年齢が引上がり、最大75歳まで繰下げで84%増が可能となります。
繰下げ支給の要件
① 66歳に達する前に裁定請求をしていないこと。
② 65歳に達した時、または65歳に達した日から66歳に達した日までの間に障害基礎年金、障害厚生年金、遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給権を有しないこと。
繰下げ申出の留意点
① 付加年金は、老齢基礎年金と同様に支給が繰下げられ増額するが、振替加算は、老齢年金が支給されるときからの加算となり、増額されない。
② 老齢厚生年金とは別々に繰下げ申出ができる。
70歳以降の請求時の繰下げ制度の見直し(令和5年4月施行)
繰下げ支給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられることに伴い、70歳以降に請求し、繰下げ受給をしない場合の措置について、見直しがおこなわれます。
今までは、70歳以降に年金請求を行い、かつ請求時点で繰下げ受給を選択しない場合は、増額されない本来の年金が一括支給されるが、請求時点から遡って5年を超える期間の年金は、時効消滅していました。
改正後は、70歳以降80歳未満の間に請求し、かつ請求時点における繰下げ受給を選択しない場合、5年前に繰下げ申出があったとして、増額された年金が一括支給されます。
年金の繰上げは減額しますが、その分受給期間が長くなります。反対に年金の繰り下げは増額しますが、その分受給期間が短くなるので、総受給額でみると一概にどちらが得とは言えません。ご自身の生活状況に応じて、何歳から年金を受給するか判断することが大切です。50歳以上の方は、在職老齢年金や繰上げ・繰下げの年金額の試算ができますので、年金事務所でご確認いただくか「ねんきんネット」をご活用下さい。