カスタマーハラスメント
2022/08/22
定期的に行っている社内での判例勉強会にて、先日はカスタマーハラスメントを理由とする、使用者の安全配慮義務違反に基づく賠償請求についての事例を取り上げました。その判例では使用者が一定程度の対応措置をとっていたことにより、賠償請求は否定されました。しかしながら、その対応措置の内容次第では結果が変わっていたのではないかと思います。
厚生労働省が令和2年度に行った調査では、全国の企業・団体に勤務する20~64歳の男女労働者のうち、過去3年間に勤務先で顧客等からの著しい迷惑行為を一度以上経験した割合は15.0%で、パワハラの31.3%よりは低いものの、10.2%のセクハラよりも割合が高い結果がでています。※1
2022年4月より中小企業においても施行されることとなった改正労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」ですが、そのパワーハラスメントの防止に関する指針においては、以下のように記載されています。
事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮として、以下のような取り組みを行うことが望ましい。
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 被害者への配慮のための取り組み(被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に1人で対応させない等の取組)
- 他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組(マニュアルの作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組)
企業や業界によって顧客等への対応基準は様々であることが想定されますが、顧客等からのクレーム・言動のうち、その要求内容の妥当性と要求内容を実現するための手段が社会通念上不相当なものであり、かつ労働者の就業環境が害されるものについては「カスタマーハラスメント」に該当すると考えられます。
まずはあらかじめ自社でのカスタマーハラスメントの判断基準を明確にした上で、社内での対応方針の統一化と現場への共有が必要です。
企業においてカスタマーハラスメント対策を進めることは、従業員を守るということを行動で示すことができ、安心して就業が出来ることで離職者を減らす取り組みにも繋がっていくことが期待できます。その対策への取り組み意義は企業側、従業員側共にとても大きいものではないでしょうか。
※1 厚生労働省:職場のハラスメントの関する実態調査 主要点
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/000775797.pdf
厚生労働省:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf