長時間労働による労災認定基準と割増率について
2022/10/11
長時間労働など「業務による明らかな過重負荷」を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、以前より業務上の疾病として取り扱われ、認定要件が定められていましたが、令和3年9月に労災認定基準が改正されました。
労働時間
発症前1か月におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合について業務と発症との関係が強いと評価できることを示していましたが、上記の時間に至らなかった場合も、これに近い時間外労働を行った場合には、「労働時間以外の負荷要因」の状況も十分に考慮し、業務と発症との関係が強いと評価できると明確になりました。
労働時間以外の負荷要因
- 拘束時間の長い勤務
- 休日のない連続勤務 (追加)
- 勤務間インターバルが短い勤務 (追加)
- 不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
- 出張の多い業務
- その他事業場外における移動を伴う業務 (追加)
過労死基準ラインとも呼ばれる月平均80時間超の残業時間ですが、80時間を超えない場合にも労災認定される事案を最近よく目にします。休日が取れずに連続勤務が続いている場合には、まずは心身の負荷を下げる為にも、休日が与えられるように労務管理をお願いします。
また、小売業でシフト勤務の従業員の長時間労働について相談を良く承りますが、人材不足等の理由から特定の従業員にシフトが集中してしまうことが多いようです。以下の基準を超えるようであれば特に注意して、労務管理をお願いします。
- 1ケ月の労働時間が215時間(時間外労働が45時間)を超える
特別条項付きの36協定が必要となります。(1年単位の変形労働時間制を採用する場合は42時間超で必要)また、特別条項を締結しても年に6回が限度となります。一般的に残業時間が45時間を超えて時間外労働が長くなればなるほど業務と発症の関連が高まるとされていますので注意が必要です。
- 1ケ月の労働時間が250時間(時間外・休日労働が80時間)を超える
前月に引き続き連続して超える場合は36協定を締結していても違反となります。また、心身の負荷が非常に高くなりますので、年次有給休暇の取得促進とあわせて、休みが取れるような対策を早急にご検討ください。
中小企業は令和5年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金が引き上げられます。
現在、時間外労働の法定割増率は25%ですが、1か月の労働時間が60時間を超える法定時間外労働には50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。大企業ではすでに50%以上の率で割増賃金を支払う義務がありますが、中小企業は来年の3月末まで猶予されています。
長時間労働が常態化している事業所では、すぐに長時間労働を削減することは難しいと思われますので、早めの対策をお願いいたします。
上記の対策と併せて、長時間労働が目立つ従業員については、体調に異変が無いかどうか気にかけていただき、異常があればすぐに管理者に報告して、医者にかかるように勧める等、上司やまわりの従業員にもお伝えください。
参考
脳・心臓疾患の労災認定
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf
脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント
https://www.mhlw.go.jp/content/000833810.pdf
2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増率が引き上げられます
https://jsite.mhlw.go.jp/aomori-roudoukyoku/content/contents/001215013.pdf