上肢障害の労災認定
2022/10/27
先日、「仕事中に同じような動作を繰り返し行っていたため、手を痛めてしまった。痛みに耐えかね病院を受診したが、労災保険は使えますか。」とのご相談がありました。
労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度になります。
はっきりとしたきっかけ(事故)があった訳でなく、長年の業務で反復動作の多い作業をしたことにより身体を痛めてしまった場合に、これが労災として申請できるのかどうかが問題となります。
労働基準監督署に確認をすると、「今回のケースは上肢障害の労災として認定/不認定を判断する事案かと思います。」とのことでした。
上肢障害とは腕や手を過度に使用することにより、首や肩、指などにかけて炎症を起こしたり、関節に異常をきたす状態のことを指します。代表的なものとしては腱鞘炎等があります。
この点を厚生労働省ではリーフレットを出しており、認定基準や実際に認定されたケースを紹介しています。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-13.pdf
【上肢障害の労災認定基準】
■上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に 相当期間従事した後に発症したものであること。 ※上肢等とは、後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕、手、指をいいます。
■発症前に過重な業務に就労したこと。
■過重な業務への就労と発症までの経過が医学上妥当なものと認められること。
上記3つを総合考慮して、認定/不認定を判断しています。
実際に労災として申請を行った後日になりますが、労災保険業務センターから認定/不認定の判断を行うため、追加資料の提出依頼がありました。
提出依頼の資料は2つあり、
① 病院等へ症状等照会の同意書
➡被災者の同意を得て、労働基準監督署が病院への治療履歴や検査結果の照会を行い、症状の経緯等を確認するものになります。
② 疾病に係る申出書
➡被災者の直近6ヶ月間の作業内容や作業量、労働時間、病院を受診するまでの経緯、その他私生活で症状を起こすような出来事の有無など確認する書類になり、業務と症状に因果関係があるかどうか判断する資料になるかと思います。
仕事中の転倒等による業務災害であれば怪我をしたことを確認し易く、その後の書類作成に進めますが、今回の上肢障害による労災については長年の蓄積によって痛めてしまったため、なかなか判断がつかない事案になるかと思います。
従業員様から申請したい旨の申出があった場合は、業務内容や業務量を精査し、結果として不認定になる可能性もあることも十分に説明した上で申請を行い、労働基準監督署の判断に委ねる形になります。その後、追加資料の提出要請に対応して頂ければ良いかと思います。