1か月単位の変形労働時間制が無効とされる就業規則
変形期間を平均して40時間以内に収めれば、1日8時間や週40時間を超えても労働する(させる)ことができる変形労働時間制は、時間外労働を抑制するために良い効果をもたらします。しかし、正しく採用しなければ適用自体を否定されることがあります。
○一か月単位の変形労働時間制の要件は
労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより、以下の事項を定める必要があります。
1.1か月以内の一定の変形期間の定め
2.変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、各日・各週の労働時間の特定
※労使協定により定める場合には所轄労働基準監督署へ届出が必要
よって、
「変形期間における各日、各週の労働時間」は、就業規則その他により「具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週四〇時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しない」(昭和63・1・1基発第1号)
と解されています。
とは言っても、月ごとで、部署ごとで、個人ごとで勤務シフトは異なりそれらを全て就業規則に具体的に記載できるかというと現実的には難しいところです。そこで一つ重要な通達があります。
◇通達(昭和63・3・14基発第150号)
省略・・・必ずしも就業規則によって、各人毎の各日・各週の労働時間が明定することまで求める趣旨ではない。業務の実体から月毎に勤務割(勤務ダイヤ・勤務シフト)を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組み合わせの考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法を定めておき、それにしたがって各人の勤務割を、変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りると理解されている。
この通達によれば各人毎の各日、各週の労働時間を就業規則で特定することが難しいのであれば、就業規則において以下を定めておかなくてはならないということです。
1.各直勤務の始業終業時刻
2.各直勤務の組み合わせの考え方
3.勤務割表の作成手続き及び周知方法
等
変形労働時間制が認められないとされる就業規則の定め方は以下のようなものがあると考えます。
・就業規則に変形期間や40時間以内とする定めしか記載がなく(前掲1~3の記載をしていない)、労働時間の特定についてはシフト表に記載するのみで運用をしている。
・就業規則に始業や終業時刻の定め等は記載があるが、時差や変更の可能性の記載がなく、各事業場の運用実態と異なる記載をしている。
従って、シフト制における1か月単位の変形労働時間制が有効とされる就業規則については変形期間を定めたうえで、1~3の記載をしつつ(2について無限にパターンがあるのであればシフトの組み方をパターンで整理できないか検討する、できない場合はせめて原則となる始業終業時刻を記載し、時差や変更の可能性を記載する)、運用実態にも矛盾がないようにしておくことが重要と言えそうです。私自身もこれらの考え方は1か月単位の変形労働時間制の適用は就業規則に記載することが楽かと思いきや、労使協定での適用も検討するきっかけとなりました。