令和5年4月から施行される年金に係る改正について
年金制度について来月4月より改正が施行される2つについてお伝えします。
まずは、在職老齢年金の支給停止額の計算に使われる基準額の引上げです。
60歳以降、厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金を在職老齢年金といいますが、年金の月額と給与・賞与の総報酬月額相当額の合計額が、ある基準額を超えると年金額が減額されることになっています。基準額は現在47万円ですが、令和5年4月より48万円に引き上げられます。
令和5年4月分の年金から対象になりますので、支給日としては令和5年6月15日支給分からが対象となります。(4月分・5月分が6月に支給されます)令和5年4月14日支給分は、令和5年2月分・3月分となり基準額は47万円のままですので、注意が必要です。
年金支給停止額=(年金の基本月額+総報酬月額相当額-基準額48万円)÷2 となります。
停止の対象となるのは、老齢厚生年金の部分だけであり、老齢基礎年金は収入の金額に関わらす全額支給されます。
もう一つの改正は、「特例的な繰下げみなし増額制度」です。
令和4年4月から老齢年金の繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられ、年金の受給開始時期を75歳まで自由に選択できるようになりました。
これを踏まえて、令和5年4月から70歳以降も繰下げ待機を選択することができるようになりました。繰下げ申し出をできる方が、70歳到達後に繰下げ申し出をせずに、さかのぼって本来の年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申し出をしたものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができるようになりました。これを「特例的な繰下げみなし増額制度」といいます。
少しわかりにくいので、例をあげますと、65歳の時点で本来の受給権は発生しますが、その時点で年金の裁定請求をしなかった場合、例えば、71歳の時点で繰下げの申し出はできますが、繰下げの申し出をせず、本来の年金を受け取ることを選択した場合に、71歳より5年前の66歳に繰下げ申し出をしたとみなされ、1年分の繰下げ増額分(0.7%×12ヵ月分=8.4%)を66歳から71歳までの5年間分、一括して受け取れるということです。
特例的な繰下げみなし増額制度の対象者は次のいずれかに該当する方です。
- 昭和27年4月2日以降生まれの方(令和5年3月31日時点で71歳未満の方)
- 老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日以降の方(令和5年3月31日時点で老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して6年を経過していない方)
特例的な繰下げみなし増額制度の手続き等に関しては、令和5年4月1日から可能となります。
また、過去分の年金を一括して受給することにより、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金等に影響のある場合がありますのでご注意ください。