労働条件明示のルールが変わります
2024年4月から労働条件明示のルールが変わります。労働基準法施行規則5条の改正によって定められます。明示のルールに追加されるのは、以下の4つです。
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 更新上限の有無と内容
- 無期転換申込の機会
- 無期転換後の労働条件
※1については全ての従業員に対する明示事項、2~4については有期契約労働者に対する明示事項等になります。
1.就業場所・業務の変更の範囲
全て労働契約と有期労働契約の更新のタイミングごとに「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要になります。将来の配置転換により変わる可能性がある就業場所や業務の範囲を想定する必要があります。
◇記載例
就業場所:会社本社所在地
業務内容:営業、その他営業業務にまつわる業務全般
業務の変更範囲:会社の事業に関わる業務全てに配置替えの可能性がある
勤務地の変更範囲:関東圏における事業場への変更の可能性がある
有期労働契約の場合、契約当初に明示するのは当然ですが、半年後や1年後など契約を更新するたびに条件を明示する必要があります。
2.更新上限の有無と内容
有期労働者に対して、労働契約の締結と更新のタイミングごとに、更新上限(有期契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。
◇記載例
更新の有無:有り ※通算契約期間は3年を上限とする
最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合や設けていた上限を短縮する場合にはあらかじめ有期契約労働者に説明する必要があります。
3.無期転換申込機会の明示
有期契約労働者に対して「無期転換申込権」が発生するタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要になります。初めて無期転換を行使できるタイミングだけでなく、再度有期労働契約を選んだとしても、更新のたびに無期転換の申込ができる旨を明示する必要があります。
◇記載例
本契約期間中に会社に対して無期労働契約の締結の申込みをしたときは、本契約期間の末日の翌日( 年 月 日)から、無期労働契約での雇用に転換することができます。
4.無期転換後の労働条件の明示
無期転換申込権が発生する更新タイミングごとに、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。
無期転換後の労働条件を決定するに当たって、正社員等いわゆる正規型の労働者及び無期雇用のフルタイム労働者とのバランスを考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)、について有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこととなります。
労働条件については、パートタイム労働者であったものが無期労働契約となるのであればフルタイム労働となる労働条件を明示しても構いません。そのため、フルタイムで働くのであればそのまま自身の生活スタイルに合わせて有期雇用契約を選択する労働者もいることでしょう。現行では無期転換後の労働条件について、労働協約や就業規則、個々の労働契約で別段の定めがない場合は直前の有期労働契約と同一の労働条件とされています。今回の改正による労働条件の明示は「個々の労働契約による別段の定め」と考えますが、無期転換申込が増えることが予想されるため、これを機に就業規則の整備も重要となるでしょう。
今回の改正により、企業はより雇用形態ごとに人材の活用方法やその労働条件と真剣に向き合う必要があります。人手不足により事業の継続にすら影響が出てきそうな昨今、今まで無期転換に消極的だった企業においても、人材を流出させない仕組み作りの良い機会なりそうです。新しい情報については今後もお伝えしていきます。
○厚生労働省リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080267.pdf
○通達
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080722.pdf