精神障害の労災認定
2023/07/24
精神障害が労災認定されるのは、その発病が仕事による強いストレスによるものと判断される場合です。労災認定の要件は以下の①~③の通りです。
①認定基準に対象となる精神障害を発病していること
認定基準となる精神障害は「ICD-10 第Ⅴ章 精神および行動の障害分類」に分類される精神障害であって、認知症や頭部外傷などによる障害およびアルコールや薬物による障害は除きます。業務に関連して発病する可能性のある精神障害の代表的なものは、うつ病や急性ストレス反応等があります。
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
発病前おおむね6か月の間に起きた業務による出来事について、「業務による心理的負荷評価表」により「強」と評価される場合はこの要件②を満たします。表の「特別な出来事」に該当する出来事が認められた場合には心理的負荷の総合評価を「強」とします。
「特別な出来事」の類型(心理的負荷の総合評価を「強」とするもの)は心理的負荷が極度のものと、極度の長時間労働です。
〇心理的負荷が極度のもの
生死にかかわる極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした(業務上の傷病により6か月を超えて療養中に症状が急変し極度の苦痛を伴った場合を含む)等。
〇極度の長時間労働
発病直前の1か月におおむね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を行った(休憩時間は少ないが手待時間が多い場合等、労働密度が特に低い場合を除く)
「特別な出来事」に該当する出来事がない場合について
表の「具体的出来事」のどれに当てはまるか、あるいは近いかを判断します。
当てはめた「具体的出来事」の欄に示されている具体例の内容に事実関係が合致する場合にはその強度で判断します。事実関係が具体例に合致しない場合には「心理的負荷の総合評価の視点」の事項を考慮し、個々の事案ごとに評価します。
出来事が複数ある場合は、出来事と出来事後を一連のものとして総合評価を行います。原則として最初の出来事を具体的出来事として表の項目に当てはめ、関連して生じたそれぞれの出来事は出来事後の状況とみなし、全体の評価をします。関連しない出来事が複数生じた場合には、出来事の数、それぞれの出来事の内容、時間的な近接の程度を考慮して全体の評価をします。
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
1.「業務以外の心理的負荷評価表」を用いて、業務以外の心理的負荷による発病かどうか評価します。「Ⅲ」に該当する出来事が複数ある場合などは、それが発病の原因であるのか慎重に判断します。
※心理的負荷の強度が「Ⅰ」や「Ⅱ」が複数ある場合も、その出来事の内容によっては私的の心理的負荷が高いと判断されることもあります。
2.精神障害の既往歴やアルコール依存状況などの個体側要因についてはその有無とその内容について確認し、それが発病の原因であるといえるか慎重に判断します。
精神障害の労災認定まとめ
①認定基準の対象となる精神障害を発病していること。
②業務による心理的負荷の評価が「強」であれば③に進む。「弱」や「中」は労災にならない。特別な出来事に該当すれば「強」。特別な出来事が無い場合は個々の事案ごとに評価。
③業務以外の心理的負荷の評価
強度Ⅲに該当する出来事が認められない、かつ個体側要因がない場合は労災認定。
強度Ⅲに該当する出来事が認められる、または個体側要因がある場合は、業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したのかを判断し、認定または不認定を決定する。
一部割愛していますので、詳細は厚生労働省のページをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001004361.pdf