固定残業代の導入について
固定残業代の導入についての注意点をまとめました。労働基準法では時間外労働(残業)について、決められた計算額以上の割増賃金を支払う旨が定められており、この方法で計算された額以上の固定残業代を支払うことは適法とされています。会社としては煩雑な時間外労働の計算が簡易になりますが、導入にあたっては押さえておくべき基本事項が3つあります。
- 明確区分性
通常の労働時間分の賃金と割増賃金の部分とを明確に区分します。基本給等と割増賃金部分の固定残業代が就業規則(賃金規程)で明確に区分されている必要があります。具体的には、基本給25万円、固定残業代5万円と明記することです。基本給30万円(固定残業代5万円含む)などは、誤解を生じさせる恐れもあるため、控えた方が良いでしょう。
- 割増賃金額
固定残業代が、労働基準法に沿って計算された額以上である必要があります。
- 対価性
固定残業代が何時間分の時間外労働に相当するか明示するとともに、その時間数を超過する時間外労働があった場合は、差額を支払う必要があります。何時間分の固定残業代を支払うかの法律上の決まりはありませんが、36協定の時間外労働の上限が月45時間(1年変形は42時間)とあるため、それらを踏まえると、上限は40時間程度としつつ、自社で実際の時間外労働と比較して決めていくのも良いかと思います。
その他の注意点として、よく質問のある2点を紹介します。
(Q1)固定残業代は、割増賃金の基礎となる賃金に含まれるか。
→労働基準法では、除外できるものとして家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当等と定められています。この中に固定残業代は挙がっていませんが、固定残業代の賃金の性質を考えると除外して良いかと考えます。
愛知県内の労働基準監督署にも確認しましたが、同様の回答でした。
(Q2)欠勤した場合の固定残業代は控除できるか。
→原則は就業規則にどのように記載しているかが重要になります。欠勤しても固定残業代は控除しない方法も問題はありませんが、例えば月の大半を欠勤し、1日出勤した場合に満額支払うことへの疑義も生じます。お勧めとしては、通常の賃金と同様に欠勤控除する方法が良いかと思います。ただし、控除すれば、満額の時には時間外労働●時間相当分であったものが、減少しますので注意が必要です。実際の時間外労働が超過する場合は、差額の支払いが必要になります。欠勤だけでなく、途中入退社、休職、産前産後休業、育児介護休業を取得する場合も同様のことが言えますので、しっかりと記載しておくことが大切になります。
最近では、ハローワークで求人を提出する時にも、固定残業代に関するトラブル防止のため、上記のような記載を求められます。どのようなルールが自社に合っているかを十分に検討し、労使双方が納得する仕組み作りをしていきましょう。