アルコールチェック時のアルコール検知器使用義務化について
2023/09/08
半導体不足やコロナ禍の物流停滞等により、アルコール検知器の需要増加に供給が間に合わず、令和4年10月1日施行予定だった「アルコールチェック時のアルコール検知器の使用義務化」が、当分の間適用しないとされていましたが、今年4月のアンケート結果で、7割の事業所が必要台数全てを入手済みと回答したこと等から、今年の12月1日に施行されることが発表されました。
◆アルコール検知器使用義務化規定の適用について/警察庁
https://www.npa.go.jp/news/release/2023/02_sankou.pdf
令和4年4月1日以降は、「白ナンバー」5台以上を使用する事業者(安全運転管理者)でも、運転者に対して目視等(顔の赤みやアルコール臭の有無、声の調子等)での酒気帯び確認が実施されていますが、今年の12月1日からはアルコール検知器による数値での管理もスタートします。
酒気帯び状態とされるのは、呼気1リットル当たり0.15ミリグラム以上のアルコール濃度が検出された場合で、アルコールチェックの結果、0.15ミリグラム以上の数値が出た場合は、対象者を運転業務に就かせてはいけません。
呼気1リットル当たり0.15ミリグラムというと、目安では、ビールでいえば中瓶1本、日本酒でいえば1合飲んだ際に検出される数値と言われています。道路交通法に基づいて行われる行政処分では、この酒気帯びでの運転の場合は、90日間の免許停止の処分とされます。さらに、呼気1リットル当たり0.25グラム以上のアルコール濃度であれば、免許の再取得ができない欠格期間2年付の免許取り消し処分とされます。
摂取後のアルコール分解には個人差がありますので、同じ時間、同じ量飲んだからと言って、アルコール検知で同じ数値になるわけでもなく、また、これまでは目視等では問題なかった人でも、アルコール検知器を使用することで、酒気帯びと判定される可能性も考えられます。
アルコールが抜けるには、どのくらいの時間を要するのかという興味深い記事がありました。先ほどの目安である、ビール中瓶1本、日本酒1合でのアルコールを分解するために必要な時間は、体重65kgの人で約4時間とのことです。
個体差や飲むアルコールの度数に違いがあることを考慮しても、適度な晩酌であれば、翌日の運転に支障をきたすことはあまりなさそうですね。そして、運転開始前4時間を切っているなら絶対にアルコールは飲まないことが必要です。
朝風呂やサウナに入ってきたから大丈夫と思っている人もいるようですが、体内の水分は入浴等で排出されても、アルコールが早く抜けることはありません。むしろ、脱水症状となる危険性が高いので、飲酒後すぐの入浴等はお勧めできません。
次の日の仕事で運転をする場合は、適度な飲酒量にとどめて早く就寝し、次の仕事に備えましょう。ストレス等による過剰な飲酒であるならば、企業は周りの従業員からの情報提供やストレスチェック、面談等を実施する中で聴取し、必要であればメンタルヘルス対策を講ずるべき事案です。
ところで、アルコール検知器でのアルコールチェックの結果、酒気帯びだった場合、運転はさせないにしても、その他の業務には就かせて良いのかという点はどうでしょうか。「お酒は20歳から」とされているように、20歳を超えている人の飲酒に対する罰則はありません。そのため、酒気帯びでは働いてはならないという決まりは、法的には存在しません。
酒気帯びでの勤務を禁止するのであれば、就業規則の服務規律の中で「酒気帯び状態での入場を禁ずる」旨規定し、懲戒の中で酒気帯び勤務についての処分を規定することが必要です。
当然ながら、アルコール検知器での高い数値が出ただけで、すぐに懲戒処分することはできず、目視等での確認や、本人へのヒヤリング等で事実確認をすることが必要です。
奈良漬を50g食べた20分後に、アルコール濃度の検知をしたという実験記事もありました。奈良漬けでは、酒気帯び状態と検知されないようですので、このような言い訳は受け入れられないとしても、懲戒に当てはめるには、「弁明の機会」等々、段階を踏んで進める必要があります。
何よりも、アルコール検知器の定期点検を忘れず行うことも、正しくチェックをするためには重要なことです。
まずは、自身のアルコール適用能力を自身が把握することが大事ですし、嫌がる相手に無理やりアルコールを飲ませることはアルコールハラスメントにも繋がり、急性アルコール中毒の危険性もあるため、注意が必要です。飲酒後の運転は、武勇伝でも何でもなく、ただの危険運転であることを忘れてはいけません。