フリーランス新法の成立について
近年、「フリーランス」という雇用関係にとらわれない働き方を選択する人が増えてきていますが、フリーランスとは、会社や団体等に所属せず、業務委託等を受けて、自分の裁量で働く働き方です。自身の裁量で働けるメリットがある一方、法的保護の面で欠けているのではないかという課題も指摘されています。仕事を辞めた場合に失業給付は受けられず、仕事中怪我をした場合には労災給付が受けられないことや、取引企業との関係で弱い立場になるため、不利益な対応を受けたりするなど、いろいろな問題点が指摘されています。
そんななか、2023年5月に「フリーランス・事業者間取引適性化等法」(フリーランス新法)という法律が公布されました。施行は2024年11月ごろの予定です。
この法律は、不利な立場になりやすいフリーランスの保護を目的としており、個人または、労働者を雇用していない法人の会社で、企業等から業務委託を受けるフリーランスを「特定受託事業者」とし、フリーランスに業務委託する委託者を「特定業務委託事業者」(発注事業者)と名付けて、両者間の取引の適正化とフリーランスの就業環境の整備が目的となっています。
法律の内容の義務項目は次の5つの項目です。
①書面による取引条件の明示義務
②報酬支払期日の設定・期日内の支払い義務
③禁止事項(例えば、報酬額の減額や発注した物品を受け取らないなどの禁止)
④募集情報の適格表示
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮(例えば、育児や介護などが、フリーランスの仕事と両立できるように、申し出に応じて企業が配慮する義務)
⑥ハラスメント対策に係る体制整備(例えば、フリーランスに対するハラスメント行為に関する相談対応のための体制措置を講じるために、相談担当者を決めておくなど)
⑦中途解除等の事前予告(30日前までに予告が必要)
上記項目は発注事業者の満たす要件によって、次のように異なります。
1・発注事業者が従業員を使用していない場合→①の義務のみ
2・発注事業者が従業員を使用している場合→①・②・④・⑥の義務
3・発注事業者が従業員を使用しており、かつ継続的業務委託をする場合→①~⑦すべての義務が課せられることになります。
また、よく問題となっている、形式的にはフリーランスなのに、実態は労働者としての働き方であれば、「偽装フリーランス」となり、この法律は適用されず、労働基準法が適用されることになります。
今回注目するのは、募集情報の的確表示・育児介護等と業務の両立に対する配慮、ハラスメント対策に係る体制整備、中途解除等の事前予告(30日前までに予告が必要)などの労働者に対する保護と類似の保護が取り込まれたことです。
副業・兼業が増えていることに伴い、フリーランスは今後も増えていくことが想定されます。フリーランスと業務委託をしている企業がこの法律に違反した場合、フリーランス側から、行政機関に申告を行うことができ、行政機関は、企業に対して、助言指導等の措置、勧告を経て、勧告に従う旨の命令を下し、この命令に違反したとき等に初めて50万円以下の罰金に処する刑事罰を科されることになります。対象となる発注事業者である企業においては、自社の現在の取引状況を再確認して、問題があるようであれば、正しい取引ができるように準備を進める必要があるでしょう。