ジョブ型雇用における再認識
ジョブ型雇用とは、「ポストに求められる職務内容を明確にし、その職務の遂行に必要なスキルを有する人材の活躍を促す」と経済産業省の資料によればこう定義されます。これでは、形式的なので三人の方にお知恵を拝借しました。
まず、一人目として、リクルートHR統括編集長藤井薫氏です。藤井氏によると、「ジョブ型」は「仕事に人をつける」(職務重視)、日本のこれまでの「メンバージョブ型」は「人に仕事をつける」(職能重視)、そこに「人材起点のジョブ型=ロール型」があり、「人の役割を明確にする」(役割重視)を日本流の「ジョブ型」として提唱しています。
さらに「ジョブ型」は職務経歴書、評価、ポスト、報酬を明確化するなどの ” 制度面 ” で語られることが多いですが、組織がイキイキして才能が開花するためには、制度の充実だけでなく、「風土」そして「節度」が重要と説きます。つまり、鍵は ” 対話 ” であると教えてくれています。みんなが本音で語ることができる「風土」、現在の自分がどういう状態なのか、年に一度くらいの機会ではなく、節目節目できめ細かく対話できる「節度」が大事だと。特に若い人たちには、本を読んだり、一人旅に出たりといった自分に向き合う時間を持つことにより、今見えている自分だけでなく、隠れた自分、未来の自分がたくさんあることに気づくこと、そして、自分自身を深く見つめるために、いろいろな人と対話を重ねることの大切さを説いてくれます。
二人目は、一般社団法人プロティアン・キャリア(自律型キャリア)協会代表の有山徹氏です。有山氏は、大手企業に入ることが安定だった時代から変化に適応し続けるためのスキルを磨き続け人間として成長し続けることが安定である、と ” 安定の定義が変わった ” と言います。
また、自分を幸せにするのは、自分しかいないし、自分自身の幸せのありたい姿を考えること、考え行動し続けることがキャリアにおいても大事だと言います。つまり、自分を知ることの重要性を説きます。そして、ジョブ型が進んでいくことで、その組織の上司を観て、この上司と働きたい、あるいは働きたくないという、選び選ばられる関係性が、会社と社員だけでなく、上司と部下にもあてはまるようになると言います。つまり、組織と個人の関係性が、従属関係からパートナー関係になると言われます。
三人目は、社会保険労務士の山崎隆延氏です。山崎氏は、中小企業版ジョブ型雇用を提言されています。具体的には、①従業員調査票+個人面談による期待人財の定義づけ、②個別の職務定義書を作成する、特に「人財」の流出を防ぐ職務定義書のすり合わせの大切を力説されます。つまり、会社と個人が趣味や将来の夢を語り合いながら職務定義書を作成する方法です。とても興味のあるやり方だと思います。
このように、日本型、日本風ジョブ型雇用のキーワードは、「対話」であることが見えてきました。成果物としては、職務定義書、役割賃金制度に帰結すると思いますが、そこに行き着くまでの組織におけるコミュニケーション風土の構築がポイントだと再認識できました。三人の方に感謝申し上げたいと思います。