懲戒処分の社内公表について
従業員に対する懲戒処分を行う際,懲戒処分の妥当性が一番多いご相談ですが、懲戒処分をした事実やその他の情報について、社内に公表してよいかというご相談を受けることがあります。
懲戒処分は,非違行為等があった場合にこれを戒め,再発を防止するとともに社内秩序を回復するためのものです。懲戒処分をしたことを社内に公表することは他の社員に対して同様の行為をした場合に処分を予見させることで、再発防止の役割があると言えます。
また諭旨解雇や懲戒解雇の処分により当該従業員が退職という結果になった場合、非違行為の内容や会社処分の妥当性が正しく情報共有がされなかった場合にあらぬ噂により、会社に対する不信感を抱くといった職場秩序の混乱が発生する可能性もあります。よって懲戒処分の社内公表には社内の秩序維持の観点から一定の必要性があると言えます。
社内の秩序維持のためには、どの程度の範囲を公表するべきでしょうか。
1.非違行為の概要 (例:無断欠勤、ハラスメント行為、横領行為等)
2.就業規則の懲戒事由該当条項
3.懲戒処分内容
これらは社内秩序のために公表するのは妥当と言えます。ハラスメント行為を行った従業員へ対して、会社が毅然と処分をすることは従業員の職場環境を守る姿勢を示すことができ従業員のモチベショーションの上昇も期待できます。
ではこれらに加え、氏名はどうでしょう。処分の公表はあくまで再発防止や秩序維持を目的とするものであり、当該従業員への制裁のために行うものではないため、氏名の公表の結果、情報が拡散され通常の私生活まで脅かされるような結果となった場合、プライバシーの侵害や名誉・信用を低下させたとして責任問題に発展し、その従業員から不法行為による損害賠償請求を受ける可能性もあります。氏名の公表についてはその必要性を十分検討し、必要性が高くないのであれば控えるべきでしょう。懲戒処分はその職位によっても妥当性が異なるため、役職の公表のみ行うといった方法もあります。
懲戒処分の公表について、その目的と方法を今一度見直し、就業規則にもその旨を規定しておくと良いでしょう。