労働時間の算定について
労働時間とは、一言で表すと労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間のことを指しますが「これは労働時間に含まれるのか?」と相談を受けるケースが存在します。相談が多いのは以下のようなケースです。
・手待ち時間
手待ち時間とは、作業が控えているものの、荷物が到着していないなどの理由で待機している時間です。
一見休憩時間として取り扱って良いようにも見えますが、労働からの解放が保証されていなければ労働時間とされる可能性が高いです。
・呼び出しに備えた自宅待機時間
呼び出された場合は可能な限り迅速に現場に来ることが義務付けられているような時間は労働時間とされる可能性が高いです。スマホを持たせ呼び出しに備えさせるようなことがある場合、労働時間とされないようにするには場所的な拘束や、行動の制限を行うべきではありません。また呼び出しに応じられなかった場合、上司や経営者が対応するような予備的なルールを取り決めておくと良いでしょう。運転のためお酒は控えるようにお願いしておく程度であれば労働から解放が保証されている限り、労働時間とされる可能性は低いと考えます。
・行事への参加や研修時間
行事へ参加することや業務に必要な研修の受講を事業主が明示、黙示に限らず命じた場合、その研修時間は労働時間とみなされるでしょう。しかし、参加や受講は労働者の自由意思に委ねられ(不参加でも不利益な取扱いはないこと)行事や研修に参加する場合や、趣味的な研修を受講する場合は、労働時間とはなりません。
・通勤時間
通勤時間は、労務提供のための移動時間であるため、通常は労働時間に含まれません。ただし、「会社の重要書類や備品等を管理することを義務づけながら通勤をさせる」などの状況では労働時間とされる可能性があります。出張における移動時間についても同様に原則移動時間は労働時間ではありませんが、重要書類や備品の管理のため、一定の緊張を強いられるような状況での移動は労働時間となる可能性があります。
・着替え、準備時間
企業によっては、業務の前後に着替えや準備をしなくてはならない場合があります。会社の命令で行われているものなのであれば労働時間として考えなくてはなりません。始業時間までに業務の準備(メールのチェックや清掃)をすること等が就業規則や労働契約書に記載があったら尚更命令されている根拠となります。
着替えについてはサラリーマンのスーツと同様、自宅で着て出勤することが可能な場合は労働時間に該当しません。労働時間として算定することが難しければ、衛生面を考慮しながら自宅から着用してこられるか検討してみても良いでしょう。
このように会社が労働者にやってほしいこととして、明示、黙示を問わず指揮命令下にある行動時間は労働時間とされます。逆に、指揮命令下にないにも関わらず、不要な作業を行うことは会社の業務と関連があったとしても労働時間ではありません。使用者は労働者の業務内容を管理・把握し今一度、適切に労働時間が算定しているか見直すことが肝要です。