労務相談、管理者研修、未払い残業代請求対策なら労務管理センター

転倒災害への備え

   

2月に入り最強・最長寒波という言葉が耳に聞こえていた時分、自身にとっては珍しく寒さに当てられたのか風邪をひきました。再び強烈な寒さが2/17頃より戻ってくるそうです。

この時期は降雪により転倒したとして通勤または労働災害の手続き依頼を受けることが増加します。多い例は「地面が濡れており転倒し、手をついた拍子に骨折をした」というものです。実はこの「転倒」による労働災害は寒い時期だけではなく全労働災害の約4分の1を占める事故となっています。

 

「労働災害防止計画」をご存じでしょうか。

「労働災害防止計画」とは、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画です。現在、国、事業者、労働者等の関係者が重点的に取り組むべき事項を定めた 2023年 4 月~ 2028年 3 月までの 5 年間を計画期間とする「第 14 次労働災害防止計画」が実行されています。

 

労働に関して近年課題となっているのは、「高年齢労働者対策」、「外国人労働者対策」、「メンタルヘルス対策」です。「第14次労働災害防止計画」では、これらに加えて新たに年々増加傾向にある「転倒による労働災害」を重要課題として挙げました。さらに転倒によるケガの約4割が休業1ヵ月以上のケガとのことです。

 

転倒災害の原因は、「滑り」、「つまずき」、「踏み外し」の3つに大きく分けられます。

労働安全衛生規則第542条においても、事業者は、屋内に設ける通路について、通路面は、つまずき、すべり、踏抜等の危険のない状態に保持しなければならない旨を規定しています。

 

そのため、つまずくリスクがあるような物が雑多に積まれた通路や水や油により濡れて滑りやすくなった通路を放置すればこの規定に違反し、安全配慮義務違反を問われる可能性があります。

 

労働災害防止計画において転倒災害は、外的要因の他に、加齢による身体機能の低下や、骨密度の低下による重症化も分析されています。これらを踏まえて、防止策として有効なのは、「(1)整理整頓」、「(2)清掃」、「(3)運動」です。

 

事業場内を巡回し、滑りやすい場所や躓きが起こるような場所洗い出し、滑りやすい場所には安全な床材や滑り止めマットの設置、拭取り作業、躓く恐れのあるものには注意喚起を促すようなシール等により見える化をする対策が効果的です。

 

近年の経営環境の悪化により、安全衛生への取り組みには十分な人員や予算を割けない事情があるようです。しかしながら、少しの注意で防ぐことができたかもしれない転倒災害の発生による経営リスクは、「休業補償と医療費負担」、「人員不足による業務停滞」、「社会的信用の低下」と小さくありません。人手不足が急速に進んでいる昨今、自社の人材を「コスト」ではなく、「資本」として捉え、安全衛生対策を含む教育や労働環境の整備は事業者にとって人材確保の観点からも経営にプラスになることは間違いないでしょう。

 -