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■リハビリ勤務について

      2016/02/21

寒さのあまり暖房器具や簡単1人鍋に頼りすぎて、電気代とガス代が“通常の3倍”でした。うーん、今月から気を付けます。

休職中の従業員を復職させるためのリハビリ勤務について、複数の会社にご相談をいただいたので今日はこのリハビリ勤務について考えます。
まず前提として、リハビリ勤務は会社の義務ではございません。あくまで会社が円滑な労働者の復帰を目指し、そのプロセスとして任意で導入するものです。

リハビリ勤務とは、そのあり方は様々ですが、厚生労働省が職場復帰マニュアルとして推奨する「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(平成21年)」では以下のようなものが挙げられています。
1・模擬出勤:職場復帰前に、通常の勤務時間と同様な時間帯において、短時間又は通常の勤務時間で、デイケア等で模擬的な軽作業やグループミーティング等を行ったり、図書館などで時間を過ごす。
2・通勤訓練:職場復帰前に、労働者の自宅から職場の近くまで通常の出勤経路で移動を行い、そのまま又は職場付近で一定時間を過ごした後に帰宅する。
3・試し出勤:職場復帰前に、職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤する。

この手引きにもこれらの制度の導入に当たっては、“この間の処遇や災害が発生した場合の対応”、“人事労務管理上の位置づけ”等について、あらかじめ労使間で十分に検討しておくとともに、一定のルールを定めておく必要があるとしています。この一連の運用方法は心の健康問題による休業に限らず、その他の私傷病全般で休業した労働者の復帰についても参考になります。

上記のリハビリ勤務制度、特に試し出勤は実際に出勤して業務を行うため以下のようなメリットとデメリットがあります。

【メリット】
1・職場へ本復帰できるかを会社が判断する材料となる。
2・労働者にとって,身体と心を慣らす期間を設けることで,職場復帰がスムーズになる。
3・労働者に一定の安心感を与えられる。

【デメリット】
1・リハビリ勤務そのものが労働者への身体的、精神的負荷になる可能性がある。(例えば、精神の健康に問題がある場合に当該労働者に発したささいな言葉が大きなトラブルになる可能性があります。)
2・リハビリ勤務位置づけが不明確になりがちのため、後にトラブルになる可能性がある。(指揮命令下での労働があるのか?賃金の支払いはどうするのか?通勤経路、業務中に発生した事故の補償はどうするのか?等)
3・同じ職場の労働者に不公平感等が生じる可能性がある。

やはり、手引きにも記載がある“この間の処遇や災害が発生した場合の対応”と“人事労務管理上の位置づけ”は整理してからでないと大きなトラブルの元と言えますね。私の見解では、例えばリハビリ勤務中、当該労働者は会社の指揮命令下になく、一切の業務を禁止して、労災や通災についても適用外であると従業員としっかり話合いで明確にしておいたとしても、事業場の屋根の下に会社に籍がある者を受け入れた場合には少なくてもその者の身体の安全には責任があると考えます。例えばその労働者が足を怪我して、未だ充分に機能を取り戻していない場合、社内の通路は整理整頓がしてあり、労働者の歩行に支障はないでしょうか?精神の健康に問題を発症してしまった場合、周りの労働者に普段から会社内での不適切な発言や行動をしないよう教育ができているでしょうか?リハビリ出勤を導入するにしても受け入れるための準備ができていないのであれば、従前の業務の遂行に支障が無い程度まで回復が見込まれて職場復帰が可能であると医師に診断していただけるまでゆっくり自宅療養してもらうことも良い方法であるのではないかと考えます。

これらのように、リハビリ勤務には、円滑な復帰を促す他にも、留意しなければならないこともあります。今回の話でその留意点にお気づきいただけたら幸いです。

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