■派遣法改正案が閣議決定されました(金澤)
2016/02/21
ここ数日、少しずつ暖かくなってきましたね。とっても嬉しいです!
冬の寒さが本当に苦手で、こっそり背中にホッカイロを貼って凌いできました。バレていないと思っていましたが、ある時ふと鏡で後ろ姿を見てみたら、「貼ってる感」バリバリでした・・・。恥ずかしい大人ですね・・・
まぁ、終わったことは忘れて、今まさに起こっていることについてお話しましょう。3月11日に、「労働者派遣法」の改正案が閣議決定されました。平成24年10月の改正時も、その内容に衝撃が走ったものでしたが、今回の案の内容にはさらに驚かされました。色々と改正項目はございますが、今回は一番の目玉部分である「期間制限」についてのみご説明させていただきます。
まず現在の派遣労働者の期間制限は以下のようになっています。
1)いわゆる政令26業務に該当する場合は、受入期間の上限はない。
2)政令26業務(現在は28)以外の業務については、派遣先は派遣労働者を、同一の業務に最大3年(人が途中で変わっても合計で3年)までしか受け入れることができない。(但し3ヶ月を超えるクーリング期間があれば再度の受入れは可能。)これを「業務単位での期間制限」という。
※「同一の業務」か否かの判断基準は、行政の判断基準(ガイドライン)が出されているものの、明確な線引きは難しいものとなっている。
そして、改正後(案)は以下のようになります。
1)「政令26業務という区分」と「業務単位での期間制限」を撤廃し、代わりに「個人単位」(派遣労働者側の視点)と「派遣先単位」(派遣先会社側の視点)という2つの期間制限を設ける。
2)「個人単位の期間制限」とは、一部例外(後述します)を除き、同一の派遣労働者を同一派遣先の「同一単位」(※)で受け入れられるのは、「3年」を上限(これは個人単位でのカウントなので、途中で人が変わったらまたゼロから3年)とする。例えば、総務課に派遣されていたAさんは、3年経過した時点で総務課での就労は不可となり、その後は同一派遣先の他の課に移るか、派遣先自体を変更するかの2択となる。
※同一単位とは、「業務のまとまりがあり、かつ、その長が業務配分及び労務管理上の指揮監督権限を有する単位として派遣契約上明確化したもの」をいうとされている。厚生労働省は、例として「(部より下の)課」単位で論じている。
3)「派遣先単位の期間制限」とは、派遣先が派遣労働者を受け入れることができるのは、最初の派遣労働者を受け入れた時から「3年」を上限(これは事業所単位であり、課単位ではない。途中で人が変わろうが、何人受け入れていようが、会社として最初に派遣労働者を受け入れた日からカウントスタート)とする。但し、過半数労組等から意見を聴取した場合には、さらに3年間、受け入れ期間を延長することができる。(以後も3年ごとに意見聴取が必要)
※過半数労組等の意見聴取は派遣労働者個人ごとに行うのではなく、あくまで事業所単位(最初の派遣受入から3年ごと)であることに注意が必要。
以上の2点の基準をまとめて考えますと、つまり「派遣先会社は、過半数労組等の意見聴取さえすれば、永遠に期間制限なく派遣労働者を受け入れることができる。(今まで政令26業種に該当せず3年までしか受け入れられなかった業種も含めて)しかし派遣労働者側は、今まで政令26業種として働いており、期間制限なく働けていた人達も、一部例外に該当しない限り、3年で、少なくとも今の課からは離れなければならない」ということになります。
これは、どう考えても派遣労働者側にとって改悪だと思うのですが・・・一応、3年経過した派遣労働者が引き続き就業したいと希望した場合には、派遣先への直接雇用の依頼等の「雇用安定措置」を講じることとなっていますが・・・これにどれほどの効果があるのか疑問です。
ちなみに、期間制限の対象外となる「一部例外」とは、以下のとおりです。
1)派遣元会社で無期雇用されている派遣労働者
2)60歳以上の高齢者
3)日数限定業務、有期プロジェクト業務、育児休業の代替要員等の業務
確かに、従来の「26業種」や「同一業務」基準は判断が難しかったので、改正により制度が非常に分かりやすくなること自体は良いことだと思いますが、派遣先が3年ごとの過半数労組等への意見聴取を忘れてしまったり、個人単位の期間制限をうっかり超えてしまうと、平成27年10月から施行予定の「労働契約申し込みみなし制度」の対象となってしまう点は、派遣先にとって大きなリスクです。(望んでいなくても直接雇用の義務が発生してしまうため)
派遣労働者の中には、ひとつの派遣先で長く働きたいと希望する方も多いので、一部例外にあたる「派遣元での無期雇用」を望む方も多いと思います。しかし、派遣元にとっては、派遣労働者を無期雇用することは、容易には踏み切れないところだと思いますので、この点をどう解決していくかが今後の課題だと思います。
しかし、例え派遣元会社が無期雇用を避けたいと思っても、労働契約法のいわゆる「5年で無期」は適用になる点に注意が必要です。派遣労働者を1回以上更新して5年を超えて抱え込んでしまうと、無期雇用せざるを得ない状態となってしまいます。もしもこれを避けるために、5年未満で派遣元が派遣労働者との契約を切るようになってしまえば、派遣労働者は派遣先どころか、派遣元すら転々としなければならなくなる可能性があります。これで、「派遣労働者の雇用の安定」を目的にしているといえるのでしょうか・・・?
長々と書いてしまいましたが、結局今回の派遣法改正案は、派遣元・派遣先・派遣労働者の三者にとって、それぞれに大きな課題を抱えていることは間違いありません。今後国会で審議されることになりますが、実際の運用面も含め、しっかりと検討してほしいと思います。
▼厚生労働省の資料です。わかりやすく図示してあります。ご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000037775.pdf