■適切な残業時間の管理
2016/02/21
本来の残業の目的とは、就業時間内に業務が完遂せず、期日に間に合わせるためなど、必要に迫られて残業をする、または、使用者の残業命令によって残業をするというのが正しいのですが、中には、特に残業が必要のない場合であっても、または使用者が残業命令を出していないにもかかわらず、無駄に残業をするのが日常的になってしまっているといった会社もあると思います。
例えば、
・自分の仕事は終わっていても周りの雰囲気的に定時で帰りにくいから無理矢理残業している。
・残業代を稼ぐために忙しくなくても残業している。
・個人的な予定まで時間があるから、それまでの時間つぶしのため残業している。
・仕事をしつつも、雑談、インターネット閲覧など、私的なことをしながら、残業している。
など、必要がないのに無駄に残業している社員がいるといった会社も多々あると思います。
基本的には 残業をしなければいけない時とは、上司より残業指示があった場合、または、各自が申請をして承認された場合に残業が認められることなので、上司より残業命令がでていなくて、上記のような不必要な残業を勝手に行っているような場合には、使用者としては 残業手当は払う必要はないのじゃないかと思われるのはもっともなことだと思います。
労働基準法の労働時間とは 「使用者の指揮監督下にある時間または使用者の明示または黙示の指示によりその業務に従事する時間」をいいます。であれば、使用者が時間外労働を命じていたわけではなくむしろ禁止していた場合には、労働時間であるといえないことになり、そのような場合、基本的には残業手当を支払う義務はありません。しかしながら、労働者が時間外労働をしていることを使用者が黙認している場合や、または、所定労働時間に終了させることが困難なほど業務量が多い場合は「黙示の指示」があったものとみなされる可能性が高いといえます。
この「黙示の指示」として裁判例で残業時間が認められた例をあげてみますと、
<リンガラマ・エグゼクティブ・ラングェージ・サービス事件(東京地裁平成11年7月13日)>
「使用者が労働者に対し労働時間を延長して労働することを明示的に指示していないが、使用者が労働者に行わせている業務の内容からすると、所定の勤務時間内では当該業務を完遂することはできず、当該業務の納期などに照らせば、所定の勤務時間外の時間を利用して当該業務を完遂せざるを得ないという場合には、使用者は当該業務を指示した際に労働者に対し、労働時間を延長して労働することを黙示に指示したものというべきであって、 したがって、当該労働者が当該業務を完遂するために所定の勤務時間外にした労働については 割増賃金の支払を受けることができるというべきである。」
上記裁判例のように、残業命令を明確に指示していない場合であっても、業務量が就業時間内にこなすことができない場合や、納期があり、残業をせざるを得ない場合などには、黙示に残業の指示を出したことになり、残業手当を支払わなければならないということです。また、社員が自主的に残業をしているように見えても、その残業が上司が指示した業務をこなすために、必要に迫られて残業をしているようなケースは、仮に上司から明確な残業の指示が出ていないケースであっても、黙示に残業の指示を出しているとみなされる場合があるので注意が必要です。
それでは、適切な残業時間管理するためには、どのようにしたらいいのでしょうか?
1・残業は申告制にして、承認した場合に有効にする。
2・明らかに無駄に残業している社員がいたら見てみぬふりをせず、その場で注意をする。
3・就業規則に 残業についての規定を記載し、口頭でも説明をする。
就業規則で「時間外とは、使用者の指示、あるいは使用者に申請し承認された場合のみを対象とし、これらによらない時間外については賃金を支給しない」などと規定する企業もあるようです。
不必要または過剰な残業代の支払の防止策として、このような規定は、社員に対する意識付けになり、無駄な残業や、ダラダラ残業を抑止する効果がありますので有効な策と言えるでしょう。
しかし、注意しなければいけないのは、残業ゼロにこだわりすぎてもいけないということです。
残業ゼロを強要してしまうと、仕事が中途半端になり仕事の内容が雑になる可能性もでてきます。また、穴埋めを管理者が埋めなくてはいけなくなることもでてきます。
重要なのは、その残業が必要なものであるか否かの見極めです。
ほんとに業務量が多く、その業務をやることが会社にとって重要なことであれば、意味のある残業となります。それに対して、就業時間はダラダラとしていたために、慌てて残業しなければならなくなったり、事前にやっておけば、残業する必要がないのにやっていなかったために残業しなければいけなくなってしまうような、社員の準備不足、無計画のために発生した残業は認めないようにします。
そして、そのような社員には、業務の計画立てをさせ、余裕のあるときに前倒しして準備しておくなどの指導をすることも必要であると思います。
企業の生産性を高めるためにも、適切な残業時間の管理をすることが重要であるといえるでしょう。