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■職種限定社員の配置転換

      2016/02/21

限定社員とは 職種や、勤務地、労働時間などを限定して、会社と雇用契約をした労働者のことをいいますが、今回は、職種限定で採用した社員を配置転換することの有効性についてお話します。

職種を限定して採用した後、入社後に配置転換をしなければいけない状況になることもあり得ることです。
例えば、部門縮小の理由による場合や 怪我や病気による場合 能力的に不適切と判断した場合などがあります。このような場合、他の職種に配置転換することが有効であるのでしょうか。

職種限定で採用された社員において配置転換する場合、対象となる労働者が配置転換をすんなり承諾した場合には、問題なく配置転換は有効となるわけですが、労働者が「募集時に職種が限定されている」と主張し、応じなかった場合に、会社は配置転換を命じることができるかが問題となります。会社内の人事異動であれば法的には問題ないようにも思えますが、配転命令が労働者に不利益を負わせてしまうようでは、権利濫用として無効となってしまいますので慎重にする必要があります。

過去の裁判例をみてみますと、
<エバークリーン事件 千葉地裁松戸支部 平成24年5月24日>
ドライバーとして車の運転とドラム缶の積込み等に従事していた労働者が、作業中に左ひざを痛めたため、会社はドライバーの仕事は 無理と判断し、工場勤務を命じ、給料が27万円から16万円となった。
それに対して、 労働者は「ドライバーの職に限定して契約したので、配置転換は契約に違反しており無効である」と主張して裁判に訴えた。 → 配置転換無効と差額賃金の支払いを求めた
裁判所の判断は以下のとおりでした。
1・ドライバーと他の職種では就業規則、賃金規程が別になっており、どちらにも「業務の都合により配置転換を命ずる」という記載があるので 、社員の同意がなくても、無効ではない。
2・実際に、年間に数人のドライバーが工場へ異動している。
3・怪我をした労働者の身体の状況(積荷の仕事をするのは無理がある)を考えて、労働者に対しての安全配慮をしているということで、配置転換に相当性があると認められる。

上記判断のポイントは
1・ 就業規則に配置転換の可能性がある旨の記載がある
2・ 過去に職種間の配置転換の実績がある。
3・ 配置転換に相当性がある。

となり、就業規則の記載は必須ですが、実績、相当性も判断のポイントとなることがわかります。

しかし、配置転換が無効となった判例もいくつかあり、次のような場合には会社は自由に配転命令を出すことはできませんので注意が必要です。
1・労働者と会社との間で個別的に職種を限定する約束がなされており、職種限定の合意が認められる場合。
2・配転命令に業務上の必要性がない場合。
3・業務上の必要性があった場合であっても、配転命令が不当な動機・目的をもってなされたものである場合。
4・配転命令によって労働者の受ける不利益が著しい場合。

配置転換のトラブルを防ぐためにも、就業規則への記載は必須ですが、それに加えて入社時にも、労働契約書に「業務の都合により、異動、配置転換の可能性がある」旨を 明示しておき、口頭で説明をしておくのが望ましいと思います。
また、配置転換をする際には、事前に従業員に配転を打診し、業務上の必要性や配転が従業員に与える影響、従業員の賃金体系や勤務形態等に変更が生じる場合にはその詳細を十分に説明し、相当な考慮期間を与えるなどして、出来るだけ事前に同意を得るよう努め、誠実に対応する事が望ましいでしょう。

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