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■競合避止義務の誓約について

      2016/02/21

こんにちはっ大堀です。今回は退職時に締結される競合避止義務誓約に関する話です。

今まで会社の中核を担ってきた従業員が突然退職を申し込んできたとき、会社の心配はその方の退職後の動向によって会社の機密が漏洩し、会社の利益の損害に繋がるのではないかということです。信頼し、会社営業秘密などのノウハウを伝授してきた方ならなおさらですね。その場合、退職後について、競合会社への就職を禁止したり、再就職の地域を限定したり、会社の営業機密を漏洩しないという記載がある競合避止義務の誓約書を締結するのが通例です。会社機密を守るために不正競争防止法等も存在します。しかしながら、この誓約書により、無条件に元従業員の退職後の動向の全てを制限できるものではありません。なぜならば、元従業員にも憲法が守る人権として、職業選択の自由があるからです。

競合避止義務に有効性を持たせるためには、やはり会社にもそれなりの対応と措置をしておくことが求められます。そのポイントについて私の見解をお話します。

○競合避止義務の誓約書を締結する際の前提
・会社に守るべき具体的な営業秘密があり、当該元従業員がその営業機密に触れる業務に従事していたこと

○競合避止義務の有効性が認められるために効果が高い重要ポイント
・営業機密は営業機密としての取扱いと厳重な管理がされ、従業員達がそれを営業機密として理解していること(就業規則による従業員の義務化や機密管理規程の整備も有効)
・その営業機密を漏洩させない約束のために相応の賃金の支払い、退職金の増額等代償措置があること

○その他有効性を判断するポイント
・競合避止義務期間が無駄に長くないこと(必要最小限に短いこと)
・禁止行為が専門的で具体性があること(会社の主力商品を製造する際の材料配合比率の漏洩禁止等具体的な記載、禁止事項が一般的・抽象的になっていないこと)
・競合避止義務の期間や地域の限定等を取り決める根拠が明白であること(携わっていた商品開発について発売が1年後の予定のため、1年間は機密を漏洩しない等)
・当初から雇い入れ時に商品開発等のため、より専門的な人材を高い賃金で雇い入れた経緯や労働契約時の誓約があること

つまり、会社が営業機密を機密として管理されていなく、代償措置等で漏洩を防ぐ努力もせず、抽象的に漠然と競合化することを禁止するような誓約書はその効果が薄れてしまいます。またはその効果は競合化を牽制することのみとなることでしょう。この牽制も充分必要なことです。しかしながら、競合避止義務そのものが有効なものになるよう、職業選択の自由があることを前提として、日頃からの営業機密の取扱い方法(保管場所、保管方法、機密レベルの設定)、取扱う従業員の区分け等を明確にして、会社利益の根幹となるような機密であれば漏洩を防ぐための代償措置を検討する等準備をしましょう。

一言で表すならば、退職後に元従業員が被る不利益が今までに会社が与えた恩恵や企業努力に比べたら仕方がないまたはたいしたことではないと言える状態が理想です。

関連判例
東京地裁平成19年4月24日判決(ヤマダ電機事件)
東京地裁平成16年9月22日決定(トーレラザールコミュニケーションズ事件)
東京地裁平成14年8月30日判決(ダイオーズサービシーズ事件)
東京高裁平成12年7月12日判決(関東ライティング事件)
東京地判平成24年1月13日判決(アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー事件)

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