■短時間労働者に対する社会保険の適用拡大について
2016/02/21
現行での、短時間労働者の社会保険の加入要件は
1.1日または1週間の所定労働時間が通常の労働者のおおむね4分の3以上であること
2.1カ月の所定労働日数が通常の労働者のおおむね4分の3以上であること
この2つの要件を満たした場合に被保険者となるとされていますが、
平成24年8月22日に交付された「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」の中で健康保険法・厚生年金保険法の一部が改正され、
平成28年10月より、従業員数500名超の企業においては、社会保険被保険者の適用範囲が拡大されることになりました。この改正により、短時間労働者の社会保険の加入要件は以下のようになります。
1・週の所定労働時間が20時間以上
2・賃金88,000円以上(年収106万以上)
3・勤務期間が(見込み)一年以上
4・学生でないこと
5・従業員501人以上(正社員および現行の社会保険に加入する被保険者要件に該当する短時間労働者の人数)の企業
以上のすべての要件を満たす者は被保険者になります。
一方、500名以下の企業は今回の改正は対象外ではありますが、5年後の平成31年9月30日までに検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるとされておりますので、将来的には同じように対象になることと思われます。
企業としては、これまでの労働条件のままで社会保険に加入させるのか、労働時間を短縮して労働条件を変更するのかなど、施行日は、2年程先のことではありますが、雇用管理の仕方を今のうちから、長期的に検討しておくのもいいのではないかと思います。飲食店などのサービス業、パートタイマーを多数雇用する事業主にとっては、人件費に大きく影響すると思われますので、重要な改正事項となるのではないでしょうか。
この改正の目的のひとつは、「これまで被用者保険の恩恵を受けられなかった非正規労働者に社会保険を適用し、セーフティネットを強化することで、社会保険における「格差」を是正すること」のようですが、昨年、改正された、有期雇用契約社員の無期雇用契約社員への転換制度に続き、企業としては頭の痛いところですね。
一方、最近の年金事務所の調査では、短時間労働者の適正な加入がされているかどうかを指摘されることが多いようです。短時間労働者の社会保険の加入基準は、給与額の高低ではなく、「常用的使用関係にあるか否か」により判断されます。加入基準に該当するにもかかわらず加入を怠った場合には、入社日または社会保険加入要件を満たした日に遡って最大2年間の保険料を請求される場合がありますので注意が必要です。
今後、社会保険の加入については ますます強化されていくことと思われますので、今のうちから雇用管理についての整備を進めていくことが重要であると思います。