■懲戒処分の原則
2016/02/21
こんにちはっ 今回は懲戒処分を下す場合に会社が理解しておかねければならない原則のお話です。
懲戒処分に関する法律は労働契約法第15条に「懲戒は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」とあります。これだけでは足らず、懲戒処分をするためには留意するべき原則が7つあります。
『懲戒処分を行う際の7原則』
1.罪刑法定主義の原則
懲戒処分を行うにあたっては、処分の対象となる行為、処分の種類・内容を就業規則等により明らかにしておかねばなりません。(労働基準法89条)経営者の主観で処分を実施することは許されておらす、就業規則の周知も必要になります。
2.適正手続の原則
当該労働者が行った行為に対して、事実関係の充分な調査と、本人への弁明の機会付与等、懲戒処分を下すまでに適正な手続きを経ることが必要です。就業規則に懲罰委員会の設置等行う旨定められていれば、その手続きも遵守してください。
3.合理性・相当性の原則
事案の背景や経緯、情状酌量の余地等を考慮して、必要のない処分や、重すぎる処分であってはいけません。社会通念上相当かが問われます。
4.平等取り扱いの原則
以前に同様の事案があった場合は、当時の処分との均衡を考慮してください。会社にとって優秀である労働者であるからと軽い処分、または見逃した場合、他の労働者が同様の問題行動を起こした時に処分することが難しくなります。就業規則に則り平等な手続きをすることが重要です。貢献度により処分を軽減したい気持ちは理解できますが、評価されるべきところがあるのであれば賞与や昇格に関係した人事考課に反映させるべきでしょう。
5.個人責任の原則
原則、個人の行為に対して懲戒をするものであり特定の人物の懲戒行為について懲戒事由に関与していない者や部署の連帯責任を負わせるようなことはできません。部下の行った懲戒事由についてその監督義務がある上司に監督不行届をその責任の範囲で処分を下すことはあり得ます。
6.二重処分禁止の原則
同一の事由に対して、2回以上の処分を科すことはできません。事実調査のために無給で自宅待機を命じると、それ自体が懲戒の出勤停止と解釈され、その後行った懲戒が無効となる可能性があるため、調査期間について出勤させたくないのであれば、会社都合の休職命令として休職手当を支払うことが無難です。
7.効力不遡及の原則
新たに処分の対象となる行為を定めた場合、その規定は制定後に発生した事案にのみ効力を有します。懲戒処分の対象とするべき行為は多様化しているため、定期的に懲戒事項を見直しましょう。
懲戒処分を下すにはこれらの原則を満たしているかが問われます。そのため会社が主観で処分することができない懲戒は窮屈ではあります。しかしながら、会社がこれらの原則を遵守したうえで、懲戒処分を毅然と行うことが会社の秩序を堅固に守ることとなります。真面目に働く労働者が気持ちの良い職場にするために職場環境を守るものとして懲戒処分を位置づけしましょう。