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■二重就労者の通勤災害

      2016/02/09

今回は複数の会社で働いている労働者の通勤災害についてがテーマです。
正社員で働くことが当たり前であるような昔にくらべ、短時間労働者が増え、複数の会社で働く労働者は珍しくない時代になりました。もちろん、兼業を禁止している会社は多くあるのですが、労働者の経済状態を理解して兼業を解禁している会社もあるようです。

では、複数の会社に勤務している二重就労者が、本業の勤務先から副業の勤務先へ向かう途中で事故にあい負傷した場合、通勤災害は認められるのでしょうか?また、認められるとしたら、どちらの勤務先からの労災保険の補償がされるのでしょうか?

従来では、本業と副業の二重就労のための移動中に生じた事故等は労災保険制度の対象ではありませんでした。二重就労者の通勤災害については、平成18年に労災保険法が改正され、二重就労者の本業先と副業先との移動間の災害も通勤災害補償の対象とすることになりました。
したがって、本業から副業先、あるいは副業から本業先へ向かう途中に負傷した場合、合理的経路及び合理的方法であり、逸脱・中断がなければ、通勤災害として労災補償が受けられることになります。

通達では、「事業場間移動は当該移動の終点たる事業場において労務の提供を行うために行われる通勤であると考えられ、当該移動間に起こった通勤災害の関する保険関係の処理については、終点たる事業場の保険関係で行う」とされています。この「終点たる事業場」とは移動先の勤務先になりますので、通勤災害についての手続きは移動先にてしなければなりません。
よって、労災補償給付の平均賃金につきましても、両社の賃金を合算するわけではなく、移動先の平均賃金を基に算出することとされています。つまり、本業から副業先への移動であれば、副業側の本業側の平均賃金をもって、副業先から本業側の平均賃金をもって、通勤災害の補償がされることになります。

しかしながら、仮に本業先の収入が8割であり、副業先の収入が2割である場合、本業が終了し、副業先への移動途中に通勤災害に被災した場合は、収入の少ない副業先の平均賃金をもって通勤災害に対する補償がされることになり、労働者にとって思わぬ不利益を被ることになりますので、注意が必要です。

会社が兼業を解禁した場合は、労働者に対して、移動中の通勤災害については、不利益を被る危険性があることを説明する必要があると思われます。

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