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■イライラに振り回されていませんか?(金澤)

      2016/02/21

ここ数年で、飛躍的に伸びている数字があります。それは、都道府県労働局等に設置した総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談です。パワハラにより被害者が鬱病を発症し、労災認定されたり、裁判になったりする例も多発しています。
いじめ・嫌がらせ・パワハラ・・・やりたくてやっている人はほとんどいないと思います。日々のイライラが解消できず、無意識に回りに感情をぶつけてしまうことの積み重ねが、いじめやパワハラとなります。つまりこれらは、自分の中の「怒り(イライラ)」という感情のコントロールがうまくできなかったこと、そして間違った怒り方をしてしまったことが原因で生じる問題だと考えられます。

私も怒りっぽい性格なので、怒りの感情に振り回されて周りに迷惑をかけてしまうことがあります。どうやったらうまく感情をコントロールできるのかと考えていたところ、偶然「アンガーマネジメント」というものに出会いました。これは、1970年代にアメリカで始まった、アンガー(怒りの感情、イライラ)をマネジメントする(上手に付き合う)ための心理教育で、元々はDVや軽犯罪者の矯正プログラムとして確立されたものですが、現在では全米の教育機関や企業でも広く導入されているそうです。

アンガーマネジメントは、「怒り」という感情について知り、「怒るべきこと」と「怒るべきではないもの」をきちんと区別し、怒るべきことについて「正しく怒る」ことが大切であるとしています。そして、怒りは我慢するものではなく、「怒ってもいい」としている点が特徴です。

私たちは幼いころから、「怒ることはよくないこと、恥ずかしいこと」という価値観を教えられてきました。確かに、常軌を逸した怒り方をしている人を見るとさすがにどうかと思いますが、「腹が立っても怒らずに自分の中に留めておくことが良いことか?」と考えると、これも良いこととはいえません。ここで大事になってくるのが、「正しく怒る(上手に伝える)技術」です。

そもそも私たちは、なぜ「怒りを覚える」のでしょうか?

仕事中に、上司や同僚や後輩に対してイラッとしたことは誰しもある経験でしょう。しかし、何故腹が立ったのか、その理由について考えてみたことがありますか?怒りは「二次感情」と言われており、怒りの裏側には、本来「分かってほしい」感情である「一次感情」が潜んでいるそうです。まずは、それを意識することが第一歩です。

例えば、自分がミスをしたときに上司が全くフォローしてくれなかったとします。これに対して怒りを感じるかどうかは人それぞれです。では、怒りを感じる人の「一次感情」には何があるのでしょうか?
それは、「普通、部下がミスをしたときに上司は助けるべきなんじゃないの!?」という期待または価値観です。この期待が裏切られたから、怒りを感じたのです。最初から「自分のミスは自分の責任だから、上司は関係ない」と考えていたならば、怒りは感じなかったでしょう。そう、私たちを怒りに向かわせていた原因は「こうであるべき」という価値観なのです。
この「~べき」は、人によって内容も程度も異なります。これは価値観ですから、基本的にはどれも間違いだとはいえません。しかし、自分にとっての「当たり前」が、誰にとっても「当たり前」とは限りません。私たちはそれを忘れて、つい自分の「~べき」を軸に物事を判断してしまうから、怒りを覚えてしまうのです。

もし、自分が「上司は部下を助けるべき」と考えていることに気づき、それが怒りの原因であると分かったならば、次は上司に対して「自分がミスをしたときは、フォローしていただけると助かります」ときちんと伝える方法を考えればいいのです。アンガーマネジメントでは、正しく怒る技術もたくさんありますが、長くなりますので割愛いたします。興味のある方は、関連書籍をご覧ください。

「怒り」は、あらゆる感情の中で最も強いエネルギーを持っています。それが故に、私たちは「怒り」に振り回されてしまいます。しかしこのエネルギーは、使い方によっては、私たちを大きく成長させる源にもなります。「何か許せないことがあるから、それを改善するために頑張れる」とか「あいつにだけは負けたくないから人一倍努力する」という経験は多くの人が持っていると思います。それは、「怒りのもつエネルギーをうまく活用した例」です。

私も、怒りっぽい自分を責めるのではなく、「怒りっぽいということは人一倍エネルギッシュということだから、人一倍頑張れるってことだな。よし頑張ろう!」とポジティブに解釈して、より成長できるように生きていきたいと思っています。「お前、全然怒りをコントロールできてないじゃないか!」という周囲のツッコミが聞こえる気がしますが、まだ学び始めたばかりなので、大目にみてください(笑)

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