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解雇無効で業績連動型報酬の支払いを命じた原審は?

      2018/03/03

クレディ・スイス証券事件事件 【東京地判 2015/03/05】
原告:元従業員  /  被告:クレディ・スイス証券

【請求内容】
退職勧奨後、解雇された元従業員が解雇無効と地位確認求めると共に、業績連動型報酬の支払いを請求

【争  点】
業績連動型報酬について、(被解雇者について)請求権として成立しているかどうか

【判  決】
算定方法に係る決定がされておらず、労使間の合意や労使慣行も存在したと認められないため、請求権は認められない。

【概  要】
上告人の従業員が上告人から退職勧奨を受けた後に解雇(整理解雇※)されたことから、上告人に対して解雇無効と解雇期間の賃金支払い、不法行為に基づく損害賠償を求めた。原審は、上記解雇が解雇権を乱用したものとして無効としたうえで、被上告人の労働契約が存続している限り、上告人は被上告の業績に応じた額の業績連動型報酬を支払うべきと判断。二審は地位確認を認容し、労働契約に基づく賃金として約1000万円の支払いを命じた為、会社が上告した。

【確  認】
【労使慣行】
労働条件等について、就業規則などの成分の規範とは異なる取扱が長期に渡っておこなわれており、それに労使が格別な異を唱えず反復・継続して行われることにより、事実上の行為準則として機能すること。
〈「労使慣行」が法的効力を有するための要件〉
① 同種の行為または事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと
② 労使双方が明示的に当該慣行に従うことを排除・除斥していないこと
③ 労使慣行が労使双方の規範意識によって支えられていること

 

【判決のポイント】

★業績に応じて支給決定される業績連動型報酬の請求権は、支給決定前に成立するか
①業績連動型報酬
固定額が毎月支給される基本給とは別に、年単位で、会社及び従業員個人の業績等を勘案して上告人の裁量により支給及びその金額が決定されるものと解される。
②賃金請求権の発生時期
具体的支給額又は算定方法についての使用者の決定または労使間の合意、若しくは労使慣行があって始めて具体的に発生すべきものというべき。
まとめ 被上告人の請求する業績連動型報酬の支給の実施及び具体的な支給額又はその算定方法に係る決定はされておらず、また、これについての労使間の合意 や労使慣行が存在したともうかがわれない。よって、その具体的な請求件が発生するとは言えないため、請求することはできない。

【参  考】
※整理解雇の4要件
① 人員削減の必要性
② 解雇回避努力(諸経費の削減や増収への努力など)
③ 人選の合理性(懲戒歴や年齢など)
④ 手続きの妥当性(協議・努力説明など)
〈4要件を具備していない事案についても総合的に解雇を有効とした判例あり〉[泉州学園事件大阪地判H21.12.18]

【SPCの見解】

■今回は、一審、二審とも原告の主張が認められ、会社側に労働契約に基づく賃金(業績連動型報酬)の支払いを命じたものであるが、最高裁は、支給決 定前のインセンティブについて具体的な賃金としての請求件はいまだ成立していないと判断した。このことから、就業規則等で、インセンティブの支払時期や支 給額の決定方法など、算定方法を明確に明示する場合は、賃金との請求件を有すると判断されることが予想されるため、慎重に定めるべきであろう。
■会社の意図的な査定拒否と判断される可能性の高いケースにおいては請求件の否定は認められない為、適切な対応が求められる。

労働新聞 2016/1/11 / 3048号より

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