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基準を満たす高年齢者は必ず継続雇用しなければならないか?

      2016/02/23

津田電気計器事件 【最一小判 2012/11/29】
原告:嘱託社員X  /  被告:会社

【請求内容】
定年後再雇用され1年勤務した嘱託社員の契約更新を拒否したことは違法として地位確認と賃金支払いを請求した。

【争  点】
賃金額等、再雇用後の契約内容が確定していなくても労働契約は成立(存続)しているのか?(最高裁の争点)

【判  決】
Xは継続雇用基準を満たしており、契約内容も規定の内容等から確定できるため、雇用は継続していると認める。

【概  要】
原告Xは60歳の定年後1年間嘱託として再雇用されたが、会社は「継続雇用基準を満たしていない」として、契約更新をせず雇止めとした。高裁までは「Xは再雇用基準を満たしていたのか?」が主な争点とし、再雇用規定所定の方法によればXは継続雇用基準を満たしていると認定された。最高裁(法律審)ではその事実を前提として争わず、従来主流とされていた「具体的な契約内容不確定でも再雇用契約は成立するか」という点を争点とした。

【確  認】
【高年齢者雇用安定法(高年齢者法)による従来の判例の考え方】(代表的なもの)
高年齢者法9条の効力については、近時の多数の裁判例は、その私法上の効力を否定しているため、高年齢者法それ自体から「当然に」本件のような結論(雇用継続)を導き出すことはできない。
日本ホーランド事件(札幌高判平22.9.30)
労働者(原告)らは再雇用の要件を満たしているとして、使用者の再雇用拒否は不法行為であるとした。しかし、地位の確認については「再雇用後の契約の本質的要素(賃金等)が定まっていない以上、契約の成立は法律上考えられない」として、財産的、精神的損害の賠償支払い命令にとどまり地位確認(雇用継続)については認めなかった。

 

【判決のポイント】

<原告Xは、会社の定めた継続雇用基準を満たしていたか?>(高裁までの争点)
【本件会社(被告)の継続雇用制度の内容】
定年後の労働者の「在職中の勤務実態」および「業務能力」に基づき、所定の方法で点数化した査定帳票を作成し、総点数が0点以上の高年齢者は再雇用するものである。
① 労働時間:「総点数10点以上⇒週40時間勤務」「10点未満⇒週30時間以内勤務」とする。
② 賃金:満61歳のときの基本給の額と採用後の週の労働時間から所定の計算式で算出した額を最低基準とする。

【Xの査定内容について】
査定内容の点数化にあたり、直近の査定帳票を用いず、表彰実績を加算しないなど評価を誤り、総点数を0点に満たないものと評価していた。
⇒ 規定の方法できちんと計算すると、Xの総点数は1点であり、基準を満たしていると判断された。再雇用基準を満たしているにも関わらずXとの雇用契約を終了したことは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められないとして、嘱託雇用契約終了後も本件規程に基づき再雇用されたと同様の雇用関係が存続しているとした。

<賃金額等、再雇用後の契約内容が確定していなくても労働契約は成立(存続)しているのか?>
再雇用規定、運用の実態から再雇用後の契約内容が確定できるため、契約内容(契約の期限、賃金、労働時間等)は、本件規程の定めに従うことになる。(上記①労働時間、②賃金等の規定内容に基づいて具体的に確定できる

【SPCの見解】

■本件は、高年齢者法による継続雇用拒否案件での初めての最高裁判決である。過去の類似の事件では、例え再雇用拒否が不法行為と認められても、再雇用後の労働条件(賃金など)が定まっていない以上、労働契約の成立は認められないという判決が出ており、これが有力とされていた(上記「確認」参照)。しかし本件は「再雇用後の契約内容は再雇用規定や運用実態から確定できる」とし、その内容にて雇用関係の存続を認めたという点で非常に画期的である。さらに、Xに「雇用継続の合理的期待」を認め、再雇用拒否を「客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当でない」と解雇権濫用法理を類推適用している点も重要であり、今後の流れを大きく変える判例となるだろう。

労働新聞 2013/3/18/2913号より

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