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非正規社員の優先的整理解雇

      2016/02/23

ライフ事件 【大坂地判 2011/05/25】
原告:期間工X  /  被告:会社Y

【請求内容】
約11年間有期雇用契約の更新、退職、再入社を繰り返した期間工Xが雇止めは違法無効として地位確認等を求めた。

【争  点】
長期雇用していた有期雇用契約労働者を、経営悪化を理由に雇止めしたことは違法か?

【判  決】
Xは異議を述べずに退職届を提出し、慰労金や精算金も受領しており、不更新条項は公序良俗に反しないとした。

【概  要】
期間工Xは、約11年にわたりY社との間で「有期雇用契約の締結・契約期間満了退職・再入社」を繰り返していたが、平成20年11月にY社は経営悪化から期間契約社員全員を雇止めすることとした。契約社員には、雇用契約締結前に説明会にて更新なしの契約であることを説明し、「不更新条項を定める有期雇用契約書を締結できるならば契約書を提出してほしい」と伝えた。Xはこの契約書に署名したが、退職後、期間満了による雇止めは違法無効と訴えた。

【確  認】
【整理解雇の4要素】
①人員削減の必要性(財政状態など)
②解雇回避努力(諸経費の削減や増収への努力・転勤の提案など)
③人選の合理性(懲戒歴や年齢など)
④手続きの妥当性(労働組合等との協議・説明義務など)

※ 一審(地裁)判決は「(2012.09.05)不更新条項付き契約での雇止め(労働契約法改正)」をご参照下さい。
二審(高裁)判決も、一審(地裁)判決とほぼ同様の内容であるため、今回は別の視点で本件を考察します。

 

【判決のポイント】

<非正規社員を(優先して)整理解雇の対象とすることは妥当か?>(上記③の人選の合理性の問題)
正社員についての希望退職募集の前に、臨時社員の雇止めをすることはやむをえないとした判例は多い。
【日立メディコ事件最高裁判決】
「臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち無期雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかったとしても,不当・不合理であるということはできない」としている。
<理由>「臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上,雇止めの効力を判断すべき基準は,いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工(正社員)を解雇する場合とはおのずから合理的な差異がある」ためである。

その他の判例でも「臨時社員が正社員と比較して採用形態・条件、職務内容、労働条件が異なる場合は、臨時社員を一律に第一順位として雇止めすることも不合理ではない」(三洋電機事件)などとしており、臨時社員と正社員との間に明確な差異がある場合は、臨時社員を優先的に雇止めの対象とするのはやむを得ないとしている。

さらに他の判例で、正社員の整理解雇について、上記②「解雇回避努力」のひとつとして「まず臨時社員を整理解雇の対象とすべき」としているものもあるが、現在はパートや契約社員といえども正社員とほぼ変わらない業務を担当している者も多いため、パートタイマーや契約社員といった単に呼称だけの理由で整理解雇の第一順位とすることはリスクが高く、その合理性は実態に応じて判断されることになるだろう。

【SPCの見解】

■本件は、最終的には「本人も会社の説明を受けて、もう更新されないことを理解したうえで契約した」という点が決め手となった。しかし、もし原告が不更新条項に納得しないと主張していたら、契約後の更新がされないどころか、最後の契約すら成立しなかったのではないか。そう考えると判決の「原告は説明を理解し、受け入れた」という内容は少し酷な気もするが、改正労働契約法19条「雇止め法理の法定化」適用にも、労働者からの更新したいという意思表示が必要とされているため、この判決内容は妥当と言わざるを得ない。本件は契約法改正前の事件だが、やはり「雇止め法理」適用には、労働者側が何らかの形で更新を希望する旨の意思表示をしなければならない。

労働新聞 2013/3/25/2914号より

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