学級崩壊見過ごしたと准教授を事務へ職務変更
-学校法人原田学園事件- 【岡山地判平29.3.28】
■請求の内容
短大の専任准教授である原告が、事務職への職務変更は視覚障害が理由であり、学生を教授、指導する利益を違法に侵害された等として、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償等を求め訴訟提起した。
■争点
業務命令の一環としてなされた本件職務変更命令に業務上の必要性やその程度、業務命令の目的、必要性について、不利益の有無やその程度について、客観的合理性があったかどうか。
■確認
障害者雇用促進法
障害者であることを理由とした差別的取り扱いの禁止(35条)
事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取り扱いをしてはならない。
均等待遇の確保・能力の有効発揮の為の措置(法36条3)
事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配慮その他の必要な措置を講じなければならない。
ただし、事業主に対して過重な負荷を及ぼすこととなるときは、この限りでない。
【判決のポイント】
■判決
本件職務命令は、教授・指導の機会を完全に奪うもので、著しい不利益を与え、客観的に合理的理由を欠き、権利乱用であり無効と解する。
■判決のポイント
学生の問題行動につき、全体としてどのように指導していくのか、あるいは原告に対する視覚補助の在り方をどのように改善すれば、学生の問題行動を防止することができるかといった点について正面から議論、検討された形跡は見当たらず、障害者に対する合理的配慮に欠ける。
授業内容改善の為の各種取組による授業内容の改善や、補佐員による視覚補助により、解決可能なものと考えられ、必要性としても十分とは言えない。
【SPCの見解】
■見解
配置転換について判例は、(1)労働協約や就業規則に配置転換についての合理的な根拠があること。(2)実際にもそれらの規定に基づき配置換えが頻繁に行われていること。(3)採用時に職種を限定する合意がなかったこと。これらの条件が満たされていれば、使用者は労働者の同意なしに配置転換できる権限を有するという考えに立っています。
また、平成30年4月1日から障害者雇用率も引き上げとなり、少子高齢化社会において、ますます障害者が社会で活躍できるように法整備も進んでいます。障害者に対し、職場において支障となっている事情の有無や希望する改善措置の内容を確認すること、また合理的配慮としてどのような措置を講ずるか当該労働者と話し合いを行うことが重要です。また、労働者から申し出があった具体的な措置を実施できない場合であっても、その旨を通知し、誠実に対応することが求められます。