育児休業前に問題あったと復職拒否し退職勧奨
シュプリンガー・ジャパン事件 東京地判平29.7.3
■請求の内容
育休前の勤務態度を理由に復職を拒否し、退職勧奨したうえで8ヶ月後に解雇した。
解雇は法律上の根拠を欠くき、権利濫用として無効を求めた。
■争点
解雇の有効性
①事業主において、妊娠等以外の理由を解雇事由としているが、それが客観的に合理的な理由であるか、また社会通念上相当であるかどうか。
②労働者の問題行動に対して、段階を踏んで注意を与え、軽い懲戒処分を重ねるなどして、必要な手順を行っていたかどうか。
③事業主の主張する復職した場合に、組織や業務に支障が生ずるという客観的・具体的な裏付けがあるかどうか。
■確認
・労働基準法16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
・男女雇用機会均等法9条3項
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第弐項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
・育児介護休業法10条
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
【判決のポイント】
上記争点の①~③において、事業主並びに会社は、いずれにおいても「証明」を果たしているとは認められない。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合は無効である。
本件においても、解雇は妊娠等に近接して行われており、かつ、客観的に合理的な理由を欠いており、社会通念上認められないことは当然に認識すべきである。
【SPCの見解】
均等法9条4項においては、妊娠中および出産後1年をけいかしない女性労働者に対する解雇は無効とする。
ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇ではないと証明したときは、この限りではない。
「ただし書き」を適用するためには事業主による「証明」が必要になる。このことからも、使用者たる会社は解雇の客観的合理性および相当性についての主張立証責任を負担していることを肝に銘じておく必要があると言えよう。
かつ、必要な手順を踏み、労働者に改善の機械を与えていくことも重ねて必要である。