時間外の営業やWEB学習は労働時間になるのか?
NTT西日本ほか事件 大阪高判平22.11.19
■請求内容
①友人らへの営業活動の時間 ②通常の勤務時間外のWEB学習時間のいずれも労働時間に該当し、賃金の支払いを求めた。
一審では、友人への販売に要した時間、及び勤務時間外のWEB学習に従事した時間はいずれも、労働時間に当たるとして、賃金の支払いを認めた事案の控訴審。
■争点
友人への勧誘やWEB学習が使用者の命令により行われており、義務であったかどうか。
■確認
労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示的な指示だけでなく黙示的な指示も労働時間に該当する。
例えば、このような時間も労働時間に該当します。
ア)就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務づけられた服装への着替え)に要した時間。
イ)労働から補償されていない状態での待機等をしている時間。いわゆる手待時間(マンションの管理等を行っている待機時間のある労働者。
ウ)参加することが義務づけられている研修・教育訓練に要する時間。
【判決のポイント】
①友人らへの勧誘等に要した作業は、時間、場所、方法はいずれも任意で決定することができ、使用者が把握することはそもそも想定されていない。
労働者が使用者の指揮命令下にあたっとは認めがたい。
②WEB学習においても、個人個人がスキルアップのため自主的な意思により行っているものと言える。使用者側においても、仕事に必要な知識を身につけることは重要であるから、WEB学習を推奨する一方、学習内容を確認するための試験などは行われておらず、労働者に対し自己研鑽するためのツールを提供しているにすぎない。
これを使用者による業務の指示とみることはできない。
【SPCの見解】
近年、政府においても「働き方改革」の目標として過重な長時間労働の解消を掲げ、その一環として、いわゆる労働時間適正把握ガイドラインを公表している。
各事業主様におかれましても、まずは労働時間を適正な方法で、正しく確認することが求められます。
その上で、「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義してあり、本件では、本来的な業務以外の労働時間性が否定された事案として、参考にすることができる。
今回の事案のように、勧誘時間やWEB学習時間が、使用者の関与の程度や本来の仕事や職務の程度、労働者の裁量がどの程度あったかなど総合的に判断していくことが必要である。