入社3年で異例の異動やバカ発言はパワハラか
ホンダ開発事件 【東京高判平29.4.26】
【請求内容】
控訴人である元従業員Xは、被控訴人であるY会社に採用され、総務係に配属されたが、上司であるA及びBらの言動により精神的苦痛を与えられ、その上、合理的理由もなく不当な動機・目的によりランドリー班へ異動させられたとして、異動の無効と上司らの言動による不法行為による慰謝料500万円の支払いを求めた。
一審において請求内容が棄却された控訴審。
【事案の概要】
控訴人である元従業員は、被控訴人である会社に採用され、総務係に配属されたが、上司であるA及びBらの言動により精神的苦痛を与えられ、その上、合理的理由もなく不当な動機・目的によりランドリー班へ異動させられた。
一審では上司らの言動は、Xの受け止め方の問題とし、意思の疎通の不十分から生じた誤解とし、パワハラなど不法行為は認めることができないとし、請求内容を棄却したため、Xは控訴した。
Xは上司との面談や送別会の二次会の席において、Aからは「休みの日は何をしている?」、Bからは「お前のやっていることは仕事ではなく、作業だ。」や「多くの人がお前のことをバカにしている。」と言われており、そういった点においてもXはパワハラとして上司らの行為を不法恋として訴えている。
【判決のポイント】
Y会社の労働協約及び就業規則では、業務の都合により、配置転換を命ずることがある旨が規定されており、Y社に裁量が認められている。
Y社ではランドリー班において、人員不足が認められ、本件異動においても動機・目的をもってなされたことであり、本件異動が無効であるまで認めることはできない。
上司であるA及びBの発言に関しては、これを聞いたXが悔しい気持ちを抱いたことは理解できるとした。
A及びBの言動や本件異動は、一体として考えれば、労働者として甘受すべき度合いを超え、不利益なものであると認められる。
このことが会社の業務として行われた以上、全体としてY社の不法行為として、Xが被った苦痛を慰謝するには100万円を下ることは内とした。
【SPCの見解】
本件上司らの発言はXの人間性等を否定するものであり、許されるべきものではない。
ただ、従来のパワハラの裁判例に照らすと、違法なパワハラとして認められるほど強烈な発言ではない。
事実として、一審ではパワハラとは
しかし、本件事案においては、上司らの言動と異動を一体として考え、労働者の甘受すべき度合いを超した不法行為に当たると判断された。
慰謝料である100万円も決して安くない金額であり、個々の事案では不法行為と認められずとも、一体として考えられれば不法行為と判断される場合もあるため注意が必要である。