外科医に配転命じ診療禁止、有効とした一審は
請求の内容
勤続25年の外科医(消化器外科部長)が、パワハラやチーム医療に必要なコミュニケーション能力が欠けているなどを理由とした配転命令、診療禁止命令は無効として、また治療サポートセンター長として勤務する義務がないことなど地位確認の仮処分を求めた。
争点
黙示の職種限定合意が認められるか。
配置転換命令は権利乱用で無効か。
【判決のポイント】
判決
黙示の職種限定合意の成立を認めるのが相当である。
本件配転命令は、本件診療禁止命令と併せて、…職種限定合意に反するものであるから、無効である。
判決のポイント
- 外科医師という職業は、極めて専門的で高度の技能・技術・資格を要するものであること、長年にわたり特定の職務に従事することが必要である。
- Y法人においても、Xの外科医としての極めて専門的で高度の技能・技術・資格を踏まえて雇用したことは明らかであり、Xの意に反して外科医師として就労させない勤務の形態を予定して、Xを雇用したとは認められない。
医師の同意なく、専門とする診療科での診療を禁止することは、医師としての高度の技能・技術・資格を一方的に奪うことになるから、当事者間において、Y法人にそのような配転命令を許容する内容の合意が成立しているとは認められない。
【SPCの見解】
確認
職種限定合意の要件について
その職業が、「極めて専門的で高度の技能・技術・資格を要するものであること、長年にわたり特定の職務に従事することが必要」である。九州朝日放送事件(最一小判平10・9・10)
配転命令の適法性について
- 業務上の必要性がない。
- 他の不当な動機・目的をもってなされたものである。
- 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである。
上記の事情に該当する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない。東亜ペイント事件(最二小判昭61・7・14)
見解
配転命令は、上記の適法性要件をクリアすれば、会社の人事権として比較的に認められやすい権利です。しかし、職種の内容が、特殊な技術、技能、資格が必要な場合には、使用者と労働者との間に明示又は黙示の職種限定の合意があったと認められやすくなります。