休職期間なくても解雇有効
ビックカメラ事件 東京地判令元.8.1
Xは、Y社との間で雇用契約を結び、主に販売員として勤務していたが、平成26年頃より問題行動(具体的には、無断での早退や職場離脱、トイレに行くと言い食堂で寝る、上司に侮辱的なメールを送る、インカムを用いての不適切な発言等)を取るようになり、Y社が注意、指導を重ねていた。
Y社は産業医との面談を実施し、専門医の受診を促したところ、適応障害・心身症・反応性うつ病等の診断がなされた。しかし、Xはその後の継続的な通院はしなかった。
Y社は問題行動により、けん責(平成27年8月)、出勤停止7日間(平成27年10月)、降格(平成28年3月)に懲戒処分を行ったが、改善がないとして、平成28年4月に解雇した。
Xは、Y社が配置転換や休職命令の措置を行わなかったことを指摘し、本件解雇は無効として提訴した。
【判決のポイント】
(1)勤務態度、遂行能力
無断での職場離脱や不適切な発言、上司への侮辱的な内容のメールをするなど、Xの勤務態度、遂行能力は著しく不良であった。
(2)解雇前に配置転換をしなかった点
Xは指導後も、繰り返し不適切な言動を繰り返していたわけであり、改善の見込みが低いと認められる。Xを配置転換することで、適する状態になるものと認めることはできない。
(3)休職命令の措置をとらなっかた点
社員就業規則に基づき、精神科への受診、通院を命じており、Xの問題行動が精神疾患による可能性について、Y社は相当の配慮を行っている。また、Xは継続的な通院を怠っていた。
(4)結論
本件解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められ、有効である。
【SPCの見解】
職場における問題行動を起こす労働者に対しては、まずは注意・指導を行い、その記録を残すことが重要となる。その際は、書面により改善事項を列挙し、改善を促すのが基本である。
それでも改善されない場合には、けん責等の軽い処分から、必要に応じて徐々に重い処分を行い、このままでは雇用を維持できない旨を伝え、さらなる自覚を促していく必要があります。
本件でも、1年未満の間にけん責、出勤停止、降格と順を追って処分を行い、同時に注意・指導を行っている。そのうえで、改善が見られず解雇した事案である。
原告Xの休職期間を設けなかったことに対しては、裁判にてXの非(通院を怠る等)が裁判でも認められ、結果として休職期間を設けず解雇が有効となった。その点で実務上参考となる。
しかし、普通解雇する場合には、裁判所は解雇に先立って休職期間を与えなければならないと考えます。一律に休職制度を設けず、解雇が有効となる訳ではないのでご注意ください。