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会社の再建に非協力的な労働者を優先的に整理解雇できるか?

      2016/02/23

淀川海運事件 【東京高判 2013/04/25】
原告:労働者Ⅹ  /  被告:会社Y

【請求内容】
自身が整理解雇の対象とされたのは、労組の執行委員・訴訟提起を理由とする不当なものとして地位確認を請求。

【争  点】
労働組合の執行委員で、時間外手当請求訴訟を提起したⅩを整理解雇の対象者としたことは不当なのか?

【判  決】
経営再建のための会社の提案に反対する等、非協力的な態度から、人選の選定に合理性ありとして解雇有効とした。

【概  要】
Y社は、平成13年以降、金融機関からの新規融資が受けられなくなっており、さらにリーマンショックによる景気減速により厳しい経営状態にあった。そこでY社は、労働組合に対しワークシェアリングの提案をしたり希望退職の募集を行ったりしたが余剰人員を解消できなかった。そこでⅩに退職金を250万円加算して退職勧奨をしたが応じなかったため、Ⅹを整理解雇した。Ⅹは労働組合の執行委員長で、経営状況が厳しい中、会社に対し時間外手当請求訴訟を提起していた。

【確  認】
【整理解雇の4要件(要素)】
※最近必ずしも全て満たさなくてもよいという判決が増えたため「要素」と呼ばれる。
(1)人員整理の必要性が有ること
(2)解雇回避努力が確認できること
(3)整理解雇対象者の人選に合理性が有ること
(4)整理解雇手続きに妥当性が有ること

【労働組合法7条】<不当労働行行為>
労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

 

【判決のポイント】

※一審判決と本判決では、結論が真逆となっているため、相違点を検討する。
【要件1】人員整理の必要性が有るか?
一審では「会社再建計画実施による経営合理化が功を奏して、本件解雇直前の経常利益が1億円を超えているため人員削減の高度の必要性なし」と判断したが、本判決では「それまでの累積債務が過大である(収益は改善したが財務状態が改善していない)」ことを理由に(おそらく金融機関からの新規借り入れができない状態も考慮)、人員削減の必要性を認めた。
【要件2】解雇回避努力が確認できるか?
一審では「会社がユニオンからの決算資料提出要請に応じなかったことやワークシェアリングの提案を撤回したこと」を問題視したが、本判決では、解雇までに「交代乗車・役員報酬や従業員給与の削減」を行ったことや、ワークシェアリングの提案を何度か行ったがユニオンがこれに応じなかったことを考慮して解雇回避措置を講じていたと認定した。
【要件3】整理解雇対象者の人選に合理性が有るか?
一審では「時間外手当請求訴訟を提起したり、ワークシェアリングに反対したことを理由とした人選の合理性には疑問がある」としたが、本判決では、「会社の存続と雇用の継続を第一に考える他の従業員とⅩの関係が悪化していること」を理由に、人選の合理性があるとした。(Ⅹは「再建に非協力的な問題社員」であるとして、これを理由に優先的に解雇対象とすることに合理性があるという判断である)
【要件4】整理解雇手続きに妥当性が有るか?
本件では、整理解雇にあたって十分な説明や協議があったとはいえないが、解雇を違法といえるほどではない。

【SPCの見解】

■本件の主な争点は「整理解雇対象者の人選の合理性」である。何を基準に解雇対象者を決定すれば合理的な人選であったといえるのかは、ケースバイケースであり、一概には言えない。判例では「年齢(まもなく定年を迎える者)」や「遅刻・早退・欠勤の多い者」という基準を用いて解雇有効と判断されたものもあるが、一般的には、「密着度」(正社員の方がパート等より高いため、パートを優先して対象とする)、「貢献度」(能力・人事考課の結果・出勤率・スキル等の低い者から対象とする)、「被害度」(解雇によって脅かされる労働者の生活の程度で、生活に困らない者から解雇する)のような基準で選定すると、合理性があると判断されやすいと考えられる。

労働新聞 2013/11/04/2943号より

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