試用期間中の延長同意、就業規則にはなく無効?
【事案の概要】
X(従業員)とY(会社)は、3カ月の試用期間で入社した従業員が、同期間を延長した後に本採用を拒否されたため解雇無効と訴えた。就業規則に延長の根拠規定はなかったが、Yは試用期間延長通知書により、1ヶ月ずつ計3回延長を行い、延長期間中に退職勧奨が行われたがXは応じず、試用期間中に本採用を拒否(解雇)された。
そのため、Xは試用期間の延長の効力を争うとともに、解雇は無効であり地位確認請求、賃金の支払いおよび不当な退職勧奨があったとする不法行為に基づく慰謝料等の請求を求めて提訴した。
【判決のポイント】
- 試用期間延長の効力
試用期間の延長することは労働者を不安定な地位に置くことになるため、就業規則等による根拠規定が必要になるが、労働者の同意を得た上での延長も許されると解されている。
しかし延長する場合はその理由、期間が不当であれば、延長自体が無効であると解される。
本件では面談で問題点を指摘するなどしておらず、職務能力や適格性を見極めると取り組みをしたと認められず、1回目の試用期間の延長は無効である。試用期間の当初の満了日より、解約権留保のない労働契約に移行したものと認められる。
- 解雇の効力
本件は試用期間中の解雇でなく、普通解雇となり、Yの主張する集中力や説明を聴きとって理解することの問題、学習意欲に不足がある態度及び意思疎通の問題であるが、Xは社会人経験もなく、Yが適切な指導を行ったと認める証拠もない。一方、退職勧奨に力を入れて一人で自習を続けさせたことを合わせて考えると、解雇事由に当たると評することはできない。
- 退職勧奨
Xを会議室に一人配置し主に自習をさせ続けたこと、退職勧奨の言動(嘘つき呼ばわり)などは手段・方法ともに社会通念上相当と認められる範囲を逸脱し、Xの人格権を侵害する不法行為に当たる。Yは使用者責任を負う。
【SPCの見解】
試用期間の延長にあたっては、延長の根拠規定となるような就業規則の規定は必須になります。延長期間については通算して6ヶ月程度が標準と言え、延長する場合は満了日の1週間前までには書面にて告知をすると良いでしょう。
もっとも延長規定さえあれば自由に延長できるわけでなく、理由も重要になってきます。その理由についても、新型コロナウイルスで長期間出勤ができず適格性を判断できず延長する場合や態度・能力不足に疑問があり延長する場合など様々かと思われます。
本件のような態度・能力不足に問題がある場合は途中で指導書などを用いて改善を促しつつ、その改善が見られなければ本採用の拒否といった判断をしていく形になります。
本採採用拒否も解雇には該当するため、延長の告知書や指導書などは文章などで保管するよう徹底ください。