退職日の日付なし、合意していないと地位確認
従業員(X)は会社(Y)との間で有期労働契約を締結していたが、令和2年1月30日に部長に対して署名・押印のある「退職願」2通を提出した。1通は退職希望日の日付の記載がなく、もう1通は退職希望日を「2020年 月1日付」とあり、月の記載が無かった。退職事由等の記載は別紙に記載されていた。Xは退職希望日の記載がないことから退職の意思表示がなされたとは言えず、同年2月3日の午前中に部長を含む管理職との話し合いで、合意解約の申込を撤回したと主張して辞職または合意解約による雇用終了を争った。
【判決のポイント】
- 「辞職」の有無
退職願の内容は退職希望日の記載はないが、労働契約を終了させる意思表示を示したものであることは明らかである。Xは退職希望日の記載がないことを指摘するが、退職の意思表示は、労働契約を終了させる意思が表示されていれば足りる。
- 撤回の有無
話し合いでのXの言動は曖昧であり、退職願の返還も求めていない。Xの撤回は、会社都合の退職になるとように交渉する手段として行ったものにすぎないとみることもあり得る。話し合いの中でXが合意解約の申込の意思表示を撤回したとは認められない。
- 合意退職の成立
遅くとも2月3日午後6時までに決裁者である部長が退職を承認し、Xに退職願が受理されていることを伝えており、XY間の労働契約は合意解約によって終了したといえる。
【SPCの見解】
従業員の退職については、口頭による合意でも労働契約の終了は成立しますが、基本的には書面で行い、後々の揉め事にならないようすることが必要です。
会社の就業規則も確認し、退職の手続きが「退職届(いわゆる辞職)」の提出になっていれば使用者の承諾は不要になりますが、「退職願(合意解約の申込)」の提出になっていれば使用者(人事権のある部長等)の承諾が必要と解釈される可能性が高いので、しっかりと承諾したことを伝える必要があります。承諾される前までは撤回が可能とされますのでご注意ください。同時に社内で退職願の承諾を行う決裁者も明確にしておくことが必要です。
今回の事案では退職願に退職希望日の記載がありませんでしたが、退職日は各種手続きを行う上で重要になるため、記載必須になります。
退職日の他には、「申出日」・「氏名」・「退職理由」や「退職後の連絡先」など記載できるよう会社で書式を用意することもご検討ください。