月給や賞与減額に同意しなかったと差額求める
2024/07/16
システムディ事件【東京地判 平成30年7月10日】
【事案の概要】
労働者 (X)はソフトウェアの製造/販売等を目的とする会社(Y社)と平成19年3月に雇用契約を締結したが、平成22年4月から賃金および賞与を理由なく減額したとして、Y社とY社の代表取締役に対して未払い賃金等を求めた事案です。
なお、平成19年3月頃に賃金はひと月45万4,500円で雇用契約を締結したが、平成20年4月以後にひと月約25万円に減額し、それに伴って賞与も減額して支払った。
【判決のポイント】
- 月次賃金減額の可否
労働契約法では使用者と労働者が対等な立場で合意に基づく労働契約の締結を原則としており、重要な賃金の減額は労働者の承諾を必要とする。承諾なく減額する場合、その根拠となる減額事由や方法、程度について就業規則に定められていることが必要になる。
Y社の就業規則では基本給や各種手当を経験、年齢、技能、職務遂行能力等に対応して支給決定するとの規定があるが、賃金が減額される要件や減額の算定基準、方法などは不明であり、減額の具体的かつ明確な基準が定められているものとはいえない。
規程には昇給に係る規定はあるが、降給については何らの規定もないことが認められる。
- 賞与請求権の有無
Y社の賃金規程には賞与を“会社の業績が著しく良好な期には支給し、業績が低下した場合等は支給しないや支給時期を延期する”旨と“賞与の支給率は業績や勤務状況等考慮して各人ごとに定める”旨の規定がある。
この規程により、X のY社に対する賞与請求権は上記の過程を経て有するものであり、その前にXが賞与の請求権を有するものとは認められない。
一方、Y社がXに特定の賞与対象期間について、基本給に一定の割合により計算した額を支払っていた場合は、個別具体的に定めたものと認められるから、XはY社に対して賞与請求権を有すると認められる。
【SPCの見解】
労働条件の一つである賃金については、使用者と労働者の合意があれば減額することは可能ですが、減額の合意を得ることは容易でなく、就業規則に合理性のある減額の根拠を規定化することが重要になります。
規定する内容としては、減額の事由/減額の方法/減額の程度を中心に具体的かつ明確な基準が定める必要があります。
昇給だけでなく、降給するケースにも想定して作成することをご留意ください。
賃金条件提示の際には不利益に関する事も事前に伝えておくことがトラブル回避にもなります。文面にて行うよう徹底下さい。