管理職がセクハラ発言、出勤停止無効とした原審は?
2016/02/23
三重県・県教委事件 【名古屋高 2013/09/05】
原告:管理職XYら / 被告:会社
【請求内容】
セクハラ発言で出勤停止や降格された管理職2人が、処分無効を求めた。
【争 点】
各出勤停止処分および降格処分は懲戒事由の事実を欠きまたは懲戒権の濫用に当たるか?
【判 決】
原審(大阪高判平26.3.28)の処分無効の判断を覆し、処分を社会通念上相当とした。
【概 要】
課長代理だった40歳代の男性2人が派遣社員の女性らに対し浮気相手との性生活などを話題にした他、「結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで」等の発言を繰り返していたとして、企業側がその男性2人をそれぞれ出勤停止30日間と10日間の懲戒処分とし降格させた。この処分が重すぎるとして男性側が提訴。一審は男性側の訴えを棄却。2審は「会社から事前の警告や注意がなかった」などの点を考慮し処分は重過ぎると判断。男性側の訴えを認めた。
【確 認】
人事院の懲戒処分の指針
継続的なセクハラ行為について、停職または減給とし、被害者がセクハラ行為によって強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職または停職とするとされている。
懲戒処分と人事権の行使よる降格(降級)は、それぞれ根拠を異にする処分であり、いわゆる二重処分には該当しないと解されている。
【判決のポイント】
原審と最高裁の見解の違い(2点)
■1.従業員Aから明白な拒否の姿勢を示されておらず、セクハラ発言が許されていると誤信していた為、斟酌した(原審)
最高裁は、職場におけるセクハラ行為は被害者が内心でこうれに著しい不快感や嫌悪館等を抱き手も職場の人間関係の悪化等を懸念して、抗議・抵抗・申告を躊躇したりすることが考えられる等を理由に、有利に斟酌することは相当でないとした。
■2.懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する具体的な方針を認識する機会がなく、会社から警告や注意等を受けていなかったことを斟酌した(原審)
最高裁は、管理職であり、セクハラに対する方針や取り組みを当然に認識すべきであり、また、セクハラ行為は第三者のいない状況で行われており、会社が被害の事実を認識し警告や注意等を行う機会があったとはうかがわれない。よって、有利に斟酌することは相当でないとした。
【SPCの見解】
■本件では、異性に触れるといった行為はなく、異性関係を暴露するなど被害者の社会的立場を悪くするような行為もなかったが、言葉のセクハラだけでもそれが執拗に繰り返されたような場合には、懲戒処分としても妥当ということが、最高裁判決により示された。この判決の影響もあり、今後は、セクハラの防止措置の徹底が求められるであろう。セクハラに対する社会的認識は厳しさを増しており、企業の対応が甘いと企業イメージが低下することも考えられる。また、懲戒処分と人事権の行使よる降格(降級)は、いわゆる二重処分には該当しないことの有効性が具体的に判示された。
労働新聞 2015/4/27 / 3014号より