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従前の勤務態度が悪いと休職者の復職要求拒みクビ

      2016/02/23

ヴイテックプロダクト事件 【名古屋高判 2014/09/25】
原告:従業員X  /  被告:製造業Y社

【請求内容】
うつ病休職して従業員が復職を求めたが、解雇され、解雇無効確認の訴えを提起した。

【争  点】
就労可能を証明する医師の診断書を提出すれば、復職させることを約束していたが、それでも解雇可能か。

【判  決】
復職を認めるとする覚書に反し、出勤停止などの段階的処分もなく解雇は社会的相当性を欠くとした。

【概  要】
従業員Xは、入社から約6年後にうつ状態との診断を受けた。その後、当時の社長より業務態度等が改善されないとして退職勧奨を受けたが本人は拒否した。ユニオンとY社とで復職には医師の診断書の提出があれば復職させるとする覚書に押印した後、休職した。XはY社に対して、医師の診断書を添えて復職願いを提出したが、解雇された。Xは解雇無効確認の訴えを提起し、一審判決で解雇を無効とした。

【確  認】
【覚書】契約書と同様に法律上の効力があり、この覚書は契約の付随事項の取り決めに使われることが多い。契約書の内容を補うような意味がある。
【診断書の持つ意味】治癒しているかどうかの判断は、医学的な根拠のもと医師の判断が必要である。しかし、医師の判断と会社の判断が異なる場合がある。医師は本人の申告のもとに診断書を作成するのであって、「職場復帰可能」と書いてもらわなければ解雇されるなど、本人からのお願いによる内容を記入する場合がある。診断書は重要な証明書となるが、それに加えて会社側と本人が面談等を行い、業務を行うことができるかどうかの話し合いが大切となってくる。

 

【判決のポイント】

■1.本件覚書と休職前のXの勤務態度等の反省との関係
Y社は覚書の効力が生ずるのは勤務態度の反省をしていることと主張するが、覚書には勤務態度の問題は何ら記載されておらず、それを理由として、解雇することは無効である。その反省を復職の条件としたいならば、覚書にはその旨の記載が必要となってくる。

■2.Xが復帰できる程度に回復していたか
医師の診断書によると、勤務の種類では時間外・休日労働、交代勤務、出張を当分禁止しており、通院は2週間に1回程度であった。また、休職前に就労していた通常の業務を行えるまでに回復しており、復職後に治癒することが見込まれると書かれてあった。

■3.経営危機を理由にXを解雇できるか
Y社はXに交付した解雇通知書に、経営危機を理由とする人員削減のため給与を支払うことができない等と記載されていた。しかし、経営危機の状態であるとする証拠はなく、実際は正社員の募集をしていたことが認められる等、Y社の主張は通らなかった。経営危機を理由に解雇するのであれば、「整理解雇の4要件(人員削減の必要性、整理解雇の回避努力、選定基準に合理性・妥当性はあるか、労組との協議や従業員への説明)」を立証する必要がある。

【SPCの見解】

■本判例は、労組を通じてあらかじめ覚書を締結していることが重要であり、医師の就労可能の診断書があれば無条件で復職させることを約束している。確かに、休職前における勤務態度は問題があったにせよ就業規則上の解雇事由のいずれかに該当するとは認められない。また、減給や出勤停止などの処分を通り越して解雇とするのは、段階的な処分を行っているとは言えず、解雇は無効と言うべきである。また、経営危機を理由に解雇できるかどうかについて、それを裏付ける証拠は全くなく、整理解雇の4要件が立証されていない。

労働新聞 2015/7/27 /3026号より

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