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解雇の意思表示

      2016/02/22

医療法人光優会事件 【大阪高判 2014/07/11】
原告:甲…正看護師  乙…事務員  /  被告:Y医療法人

【請求内容】
甲・乙の未払賃金・遅延損害金、解雇予告手当、同手当と同額の付加金、慰藉料の請求。Y医療法人の反訴損害賠償請求。

【争  点】
Y医療法人が甲・乙を解雇したか否か。

【判  決】
甲・乙への未払賃金、解雇予告手当、同手当と同額の付加金、慰謝料(各50万円)の支払い命令、Y医療法人の請求は棄却。

【概  要】
看護師ら二人(甲・乙)が、解雇後の賃金減額は無効として未払賃金等を請求。一審は請求をほぼ認めたが、慰謝料は一部に留まった為、双方が敗訴部分の取消しを求めた。
東京高裁は解雇の有無に関して、指示に従わない看護師に院長が部の解散を告げ、全職員にその旨メールで送信したことは、解雇の意思表示と認定。予告手当と未払賃金に加えて、遅延利息の支払いを命じた。

【確  認】
【解雇の意思の到達】
解雇予告の方法については、法律上の規定はなく、口頭でも文書でも差し支えない。
解雇の意思表示の効力発生の時期は、民法の定めによる。
民法第97条によると、「相手方に意思表示が到達した時から意思表示の効力が生ずる」為、確実に相手方に到達させる必要がある。当該者と直接コンタクトがとれない状況においては、民法98条の規定に従い、簡易裁判所に公示送達という方法をとり、掲示した日から2週間経過した日に、意思表示が相手方に到達したことになる(民法98条3項)。

 

【判決のポイント】

■解雇されたか否か
解雇とは、従業員の承諾を要せず、口頭または文書でなされる。
本件では、経営者の発言、担当者のメールの文面により解雇の意思表示をしたと認定。

■14.6%の遅延利息
「賃金の支払の確保等に関する法律」第6条1項、同法施行令第1条に因る。
また、遅延利息の対象となる賃金とは、名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が支払う全てのものである(労働基準法第11条)とされていること。
尚、一審では交通費の立替金も労働の対象であり賃金にあたると判示(解雇予告手当、慰藉料は民法所定の年5%)。

■解雇予告手当(労働基準法第20条1項)および付加金の支払い。
解雇と認定されたことより、それに併せて解雇日および解雇予告の有無の確認がなされた。
裁判所が解雇予告手当等を支払わなかった使用者に対して、労働基準法第114条に因って、支払命令を行う。
必ずしも同一額ではなく、事案によってそれより定額とした判決もあるが、当該判決は同一額とされた。

■解雇処分後に給与減額処分はなし得ない。
解雇が業務命令拒否に起因するものであっても、解雇処分後の離職を職務放棄であるとみることはできないのであって、甲に懲戒処分事由があるとも認められないから、Y医療法人の主張は理由がない。

【SPCの見解】

■解雇予告手当除外認定申請後即時解雇し、その後認定があった場合には解雇予告手当を支払う必要がないとの説もあるが、申請しているだけでは、その即時解雇時に解雇予告手当の除外要件(除外認定を受けていること)を満たさぬ為、労働基準法違反であること。
「客観的な除外事由がある場合は除外認定の申請の有無にかかわらず、予告手当の支払い義務がない」とした(グラバス事件:東京地判H16.12.17)もさることながら、判例はあくまで個別案件であること、それ故、別の判断が下ることも珍しいことではないことも踏まえて対応する必要がある、と考える。

労働新聞 2015/9/21 / 3033号より

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